コラム

IDPOSデータ活用入門第51回

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「連載期間中のご質問②」

 前回は連載中に頂いた、分析手法に関するご質問に回答しましたが、今回は「ID-POSデータの活用に取り組むにあたり、どのような組織を作っていくべきか」というご質問を取り上げます。勿論、お客様の購買データを直接的に得られる小売業なのか、小売業を通じて間接的に得る卸売業、消費財メーカーなのか(自社サイトの販売データは直接的に得られますが)、で異なりますし、小売業でも業態や規模、CRMのステージによっても異なります。1回のコラムで書ける内容ではない、というのが本音ですが、実はこの質問にうってつけの書籍がありますので、それをご紹介して、答えに代えさせて頂こうと思います。それはトーマス・Hダベンポート著、「分析力を駆使する企業」と「分析力を武器とする企業」(いずれも日経BP社刊)の2冊です。10年以上前の著作ですが、本質的な視点は今も変わっていません。私はこの本を10回以上読み直していますが、その時々で新たな発見がある名著です。
 詳しくはお読み頂くとして、図1に「分析を支える5つの要素」を図示しましたのでご覧ください。

 ここでは組織の分析力を支える5つの要素が紹介され、それぞれの頭文字を取ってDELTAと表現しています。
  D(Data):データ(質の高い統合されたデータ)
  E(Enterprise) :エンタープライズ(組織をあげての取り組み)
  L(Leadership): リーダーシップ(分析の知識を備えたリーダ、トップのコミットメント)
  T(Target): ターゲット(分析対象の戦略的な絞り込み)
  A(Analyst): アナリスト(分析のできる人材、組織=分析チーム作り)
 
 最初のデータについては何度かこのコラムでも取り上げてきました。良く言われる格言にGarbage in Garbage out という言葉があります。「ごみ」からは「ごみ」しか出てこない、という意味です。例えば、お客様の正確な年代データが30%しか取得できていない(性年代不明ばかり)、10歳以下のデータがある(子供の誕生日を登録)、正しい単品コードが登録されておらず、部門打ちになっている(野菜が買われているというだけで、野菜のどのカテゴリーが買われているのか分からない)、商品分類が古いままで「その他」に分類されている商品が多い、等々です。こうしたデータを使っているということは事実を重んじる企業風土があるとは言えず、結果としてお客様の購買行動を正しく把握し、適切なアクションをとることはできない、ということにつながります。
 2点目のエンタープライズは特定部門の単発成功に留まるのではなく、企業全体の取組みを目指す、ことを意味しています。そのためには3点目のリーダーシップ、特に企業トップのコミットメントが大切になります。しかし、ビッグデータが一般的な用語になった現在でも、企業トップが全社的に統合されたデータを活用する重要性を理解し、企業全体としての活動を推進される事例は意外と少ないのが実情です。トップを動かすのは成功事例ですので、最初は事業部門内のプロジェクトとしてスタートし、スピーディに効果検証して小さな成功を積み重ね、全社的な活動に仕立てるプロセス策定が重要です。そのためにも4点目の、ターゲット、わが社はまず何に取り組むべきか、をしっかりと設定する必要があります。取り組むテーマを選択する際に、改善効果が大きい、競合他社への差別化になりうる、といった取り組む価値に加え、現場の協力を得やすい等、成功につながり易いことも重視すべきです。
 
 図2に分析力を武器にするまでのロードマップを載せています。

 これを見ると分析力を武器にするまでの道のりは険しいことが分かります。部門単位で分析力の開発に取り組んで一定の成果をあげ、経営陣の関心を引くように努めても、経営陣が関心を持たないと、それ以上の発展がないままに終わる、こともあるのです。また、経営陣が分析力強化に力を入れ、そのためのリソースを配分し、具体的な計画を立てても「分析力を武器にする」というレベルに達するには越えるべきハードルがまだあることになります。早い時点からトップへの啓もうを行い、関与を高めるべきと考えられます。
 図1の5点目、アナリスト、ですが、分析のできる人材を確保してチームとして組織化することを指しています。事業部門にアナリストチームを配置し、事業部門の課題解決に当たるのですが、アナリスト同士が知識共有できることが全社的なスキル蓄積には欠かせません。COE(Center Of Excellence) とは、組織を横断する取り組みを継続的に行う際に中核となる部署という意味です。この組織の構造や留意点については、是非、先に載せた2冊の本を参考になさってください。
 このコラムも丸2年、51回続きました。年内はお休みさせて頂き、2021年は新たに、その時期に注目頂きたいカテゴリーやブランドの分析事例をご紹介するコラムとして再スタートの予定です。ご愛読いただきありがとうございました。どうぞ、よいお年をお迎えくださいませ。