コラム
IDPOSデータ活用入門 第2回
「IDPOSデータで分かること(風邪薬を例に)」
第1回の最後に示した図2のPOS、IDPOSの違いを解説します。POSデータでは2017年の11/1に風邪薬、のど飴、冷却シートからなるレシート①と、風邪薬、ミニドリンク、からなるレシート②があったことがわかります。この日、どの店でどの風邪薬が何個、いくら売れたのか、風邪薬と一緒に買われたものは何か、が分かります。
これがIDPOSだと、会員IDの情報からレシート①の購入者は40歳の女性、レシート②は35才男性であることが分かります。そして、この40歳の女性は風邪薬を買った10日後に咳止め、のど飴(前回と同じアイテムをリピート購入)、歯磨きを買い、35歳の男性はその後来店していないことも分かります。1回前に買っていた子供用の歯ブラシから40歳女性には子供がいると推測され、土曜も平日もお昼の時間帯に来店されていることが分かります。
これらの情報を組み合わせ、全ての会員の購買履歴をデータベース化すると図2に示したようなことが分かってきます。ここでは例として風邪薬を取り上げます。
まず、風邪薬が買われるタイミングをシーズン初めてと2回目以降に分けます。11/1を例にとったのは偶然ではなく、風邪薬のシーズントライアル(初回購入)のピークは11月初旬で、10月中旬から上がり始め、最低気温と相関があります。風邪薬は9月~2月のシーズンに約2回しか購入されないので、わが店で初回購入頂くことが売上確保には大事です。となると、売場作りはいつまでに行うべきか、風邪薬売上のピークである12月後半に間に合えばいい訳ではなく10月頭には売場ができていないと初回の機会ロスが起きるのです(他店で買われてしまうと残りは1回)。また1月中旬にはシーズン2回目購入者の数が初回購入者の数を抜き、風邪薬のタイプや容量が変化します。そろそろ風邪の流行も終盤と思うと容量の多いものを避けるようになる訳です。このタイミングで在庫を確認し、発注抑制や売り切りの判断を行います。勿論、エリアによって最低気温の変動があるので、エリアごとに気象情報との重ね合わせが必要です。
シーズン1回目のタイミングは年代によって異なり、シニア層は若年層よりも早いです。これはシニア層がわずかな気温の変化に体が対応できずに風邪をひいてしまうためと考えられます。わが店の支持年代層がシニア層なら、売場は早めに展開する必要があります。
また、性年代によって風邪薬の購入アイテムも異なります。来店客の年代構成と品揃えにギャップはないのか確認が必要です。
次にシーズン2回しか買われないとしたら、風邪対策品をなるべく一緒に購入頂きたい訳ですが、それを示すのが同時購買率です。ただ風邪薬を買うお客様もトイレットペーパーやシャンプーなど誰もが買うものも購入するので、一般のお客様に比べて風邪薬を買う人は何をよく買うのか考慮する必要があります。これをリフト値と呼びます。リフト値の定義や活用法について詳しくは別の回のコラムで解説するとして、一定以上のリフト値がある中で最も風邪薬と同時に買われる率(同じバスケットに入る率)が高いのは、のど飴で約9%です。よってのど飴を風邪薬と一緒に展開するのは買上点数のプラス1品にとても有効です。続いて同時率が高いのはミニドリンクで7%になります。ミニドリンクの同時購買は男性で高く、熱による体力消耗を軽減するアイテムが選ばれます。一方、女性子育て層の同時購買は冷却シート(子供の発熱対策)、マスク、体温計などで高く、シニア層では他の年代に比べ、胃腸薬と温め系の使い捨てカイロの同時購入率が高くなっています。
更に風邪薬を購入した7-10日後に咳止め薬が購入されます。これは風邪の熱は下がっても咳だけが残るためと考えられます。売場で「咳だけが残る方に」というお勧めPOPを付けて咳止め薬を一緒に展開することも考えられます。買い忘れがない様に必要なものを一緒に展開し、気付きを与える工夫はお客様にとってお役立ちできる大切な点です。
このようにIDPOSデータを活用することで、わが店での支持年代層に合わせた風邪薬をタイミングよく、また関連品も一緒に購入頂くための様々な仮説を導くことが可能になります。
例えば風邪薬ではこんなことが分かっています
- 風邪薬のシーズントライアル(初回購入)のピークは11月初旬、10月中旬から上がり始め最低気温と相関(シーズンに2回しか購入しないので初回購入頂くことが大事=売場作りはいつまでに行うべきか)、1月中旬にはシーズン2回目が初回を抜く(売場でのメッセージ変更や剤型の変化、在庫確認と売り切りの判断)
- 風邪薬と最も同時購買率が高いのは「のど飴」で9%程度、続いて「ミニドリンク剤」で7%弱、しょうが湯等の温め系
- ミニドリの同時は男性が高い(お勧め?)、女性子育て層は冷却シート、マスク、体温計、シニア層は胃薬とカイロも高い
- 風邪薬を購入した7-10日後に咳止め薬が購入される傾向が高い(前後関係、熱は下がるが咳が残る)
- 性年代によって購入する風邪薬のアイテム、初回購入タイミングに違いがある(シニアは出足が早い)
- 購入される時期によって風邪薬のタイプ、容量に違いがある
分析はそれが分かったら、何に生かせるのか?に注目
第3回目はIDPOSデータを用いて顧客の支持の度合い、ロイヤルティをどう測るかを解説していきます。