コラム

IDPOSデータ活用入門 第1回

コラム

「IDPOSデータとは何か」

IDPOSとは、図1にあるように、「会員をユニークに識別する」ための会員IDのついたPOSデータのことです。お店で買い物した時に受け取る、レシートの1行1行に、IDがついているイメージです。このIDを用いて、会員の買い物を履歴として紐付け、データベース化したものをIDPOSデータといいます。

IDPOSデータについて説明した図

IDPOSデータについて(図1)

POSデータでは「いつ、どこで、何を、いくつ、いくらで」買ったかが分かりますが、IDPOSデータではこれらに加えて「誰が」買ったか分かるため、顧客毎の具体的な購買ニーズに迫ることができます。勿論、誰がと言っても個人を特定する目的ではなく、どのエリア(郵便番号単位)に住むどんな性年代の方なのか、を把握する目的です。これだけもお店から遠いエリアに住む方が何を買いに来られるのか(遠くのお客様を惹きつけているものは何か)、競合店を越えて買いに来て下さるものは何か、わが店の強みを把握できます。また年代ごとの支持商品の違いから、商圏の年代構造を踏まえた品揃えの微調整を行うことができます。狭小商圏化が進む今、そして、お客様のわが店への支持の度合いを「来店頻度」や「購入額」ではかり、お客様をお得意様や使い分け顧客、新規顧客のように分け、対応を変えることができるのです。

「誰が買ったか」が分かるということは、「誰が買っていないか」が分かる訳で、その発想の転換がとても重要です。つまり、お店にとっては購入額の多いお得意様なのに、特定のカテゴリーを(例えばスーパーマーケットではお肉やお米、ドラッグストアではスキンケア化粧品)買っていない、ということを把握でき、これによって「何故買って頂けないのか?」「買って頂くには品揃えや売場作り、販促をどう変えればいいのか」につながる仮説を組み立てることが可能になるのです。中でも足元商圏に住むお客様の不支持(不買)はわが店の弱みとして早急に改善する必要があります。

また、IDPOSならではの情報として、繰り返し買われているものは何か、を知ることができます。わが店で繰り返し買われているものは、そのお客様にとって「来店動機」となる商品ですから、欠品させないようにし、大切にする必要があります。商品の改廃を行う際に、たとえ、全体ではそう売れていなくても、購入額の多いお得意様が繰り返し購入している商品があるとしたら、一方的なカットを行わないように注意する、ことも重要です。繰り返しの購入を示す指標を「リピート率」と呼び、これをわが店独自の売れ筋作りに生かすことができるのです。

繰り返し買っているものが分かるのと同時に、「初めて買う」ものは何か、も分かります。あるカテゴリーを初めて買うお客様はまずどの商品から入るのか、です。どの商品で新規のお客様を獲得し、どのように育成し固定化するのかのシナリオ作りに生かします。他にも季節商品であれば、そのシーズンに初めて買うのはいつか、そして何か、2回目に買うのはいつか、そして1回目との買い物の違い(容量、剤型、購入アイテム、併買品)も分かります。

また、この商品やカテゴリーを買っている人は他に何を買っているのか、「併買」を知ることができます。併買には同じバスケットの中に入る組合せである、「同時購買」と、ある期間のお客様の全ての買い物の組合せである、「期間併買」があります。夕食のメニュー提案を行うなど、クロスMDを企画するには同時購買が使われますが、お客様の悩みやニーズを知りプロファイリングを行うには期間併買を用いることが多いです。

まとめるとIDPOSデータを活用することでお客様にとって、買い易くお店にとって儲かる売場にするための「仮説」を出すヒントが得られ、立てた仮説に基づいて起こした行動の「検証」を行うことが可能になります。

POSデータとIDPOSデータの違いを説明した図

POSデータとIDPOSデータの違い(図2)

図2はPOSデータとIDPOSデータの違いを示したものですが、ここから何を読み取ることができるのか、は第2回で取り上げます。