コラム
IDPOSデータ活用入門 第4回
「離反防止と来店頻度対策」
自店のお客様の売上を因数分解する目的は大きくて複雑なものを小さくて単純な要素に分けることで「真の課題」を捉えることです。人口減少の時代、「ユニーク人数」を増やすには、会員を新規に獲得し、定着頂くことが出発点となります。店頭で声掛けして新規に会員を獲得しても、フォローをせずお店に来なくなった「離反」人数が新規を上回ると、ユニーク人数はマイナスに転じてしまうのです。
お客様がお店に来なくなる理由は、引っ越しや入院、お店で嫌なことがあった(何らかの事故)、近くに他のお店ができた、或いは(距離に関わらず)もっと良い店を見つけた、等さまざまです。このうち引っ越しや事故以外の要因ではお客様は徐々に来なくなる、つまり来店頻度が徐々に落ちていきます。完全にお店を切り替えてから呼び戻すのは至難の業ですので、優良顧客については月ごとの来店頻度と購入額をカウントし、離反傾向にあると推定される時は早めにアクションを取る必要があります。競合店ができた場合には商圏ごとにどのカテゴリーが落ちているかを見極めて対策を取ります。この時、前回述べたお客様重役会やお客様と絆を作るイベントを行っていれば、お客様に直接ご意見や改善要望を伺うことができます。
他には優良顧客で離反傾向のある方にはアンケート(郵送やメール、アプリなど)を行う事例もあります。アンケートに改善コメントを記載してくれた方には店長自ら対応策をご案内します。広域に展開している企業の中には、優良顧客が来店しなくなり、今まで買い物していたお店以外で買い物した際にレシートクーポンを出して、「お引越しされていますか?」と確認し、DMなどの特典を得るには住所変更を促す、ということを行っている例もあります。アプリ化等によりこうした施策もより効率よく行えるようになるでしょう。
続いて、因数分解の2つ目の要素、「来店頻度」を上げる方法を解説します(図1参照)。来店頻度はそのお店への来店目的の積み重ねになりますので、消耗頻度の高い日常のお買い物が大事なのは言うまでもありません。それに加えてわざわざ買いにいく看板商品作りや季節・旬を活かした新しいメニュー、食べ方・使い方の提案、それに合わせた鮮度ある売場作りが重要です。また、商品以外のおもてなし、情報提供、サービス(血圧や骨密度など健康状態の測定、収納代行、配送サービス等)も頻度を高めます。販促面では定例販促により、毎月29日はお肉の日、10日は中華の日、毎週水曜日は低糖質パンの日のようにマインドシェアを高めることが来店の習慣づけにつながります。
顧客のデータを取り始めると月に1回しか来店しない顧客が一定数(10-20%)いることに驚きます。その1回の来店はいつなのかを分析し、月初の日曜に多いとしたら月内にもう一度来店頂くべく、手配りチラシなどで次週の日曜や、月末に行う企画を案内し、もう一度来店頂く動機付けを行います。65歳以上のお客様にとって偶数月の15日は年金支給日で2ヶ月に一度の給料日に該当します。お財布のひもが少し緩み、いつもよりも高単価なものを購入される傾向にあります。10-14日頃に来店されたシニア層に15-18日に有効なクーポン券をお配りする等セグメントを踏まえた来店促進策も有効です。
IDPOSデータではカテゴリーや商品のリピート率の高低が頻度アップに関する指標になります。リピート率には色々な定義がありますが、今回は1つだけ紹介します。ある期間に商品Aを購入したユニーク人数が3人で、延べ購入人数が10人の場合、
リピート率=(延べ購入人数-ユニーク人数)÷延べ購入人数=(10-3)÷10=70%
という定義です。
リピート率が高い商品は、お客様を再び売場に連れてきてくれることを意味していますから大切にする必要があります。すなわち欠品を防止し、売場で探しやすく目立たせ、商品改廃時にはたとえ全体では売れていなくても一方的にカットすることの無い様にするといった注意が必要です。リピート率の高いアイテムのカットによりその商品を繰り返し購入していたお客様にとって来店動機が1つ失われ、店離れを招きかねないためです。リピート率が高い商品をカットせざるを得ない時は代替品を横に並べて、比較POPを作って事前に代替品に誘導したり、会員向けの試食会などで代替品をご紹介するといった工夫を行っている事例もあります。
またカテゴリー内でAランク下位もしくはBランク上位にあり、リピート率が高い商品はアウト展開するなどで露出を上げ、試食試飲、場合によってはお試し価格を設定し、未購入者にトライアル頂く機会を作ることが有効です。このようにリピート率が高い商品を育成し、わが店独自の売れ筋を作ることは来店目的を1つ作ることを意味します。
リピート率の活用については回を改めて解説しますが、なぜリピートしないのか?は以下の3つの理由、
「飽きる」 「忘れる」 「(年齢や世帯の変化によって)卒業する」
に集約できます。食品は飽きとの戦いですので、飽きない工夫、例えば同じ飲み物でも寒い冬、受験期には温めて、暑い夏には炭酸で割ってスッキリなど季節に応じた食べ方・飲み方提案や健康訴求(健康のためには効果が出るまで続けることが肝心)を行います。「忘れる」対策としては、ついで買いされる商品をレジ近くにまとめ、買い忘れの無い売場を作ることが挙げられます。また、適切な卒業先を案内することに関しては、たとえば、長年愛用してきたスキンケア化粧品でも、加齢に伴い肌に合わなくなってくることがあります。年齢や肌悩みに応じたお勧めにより、より適切なアイテムに移行する=以前のアイテムは卒業しても継続来店(購入)頂く、ことにつながります。
もう1点、季節商品はシーズン早めに1回目を買って頂くこと、食品は旬の最もおいしい時期に味わって頂くことがシーズン内のリピート率向上につながります。季節商品については別途、回を改めて詳細に説明します。
次回は1回の買い物における買上点数アップの考え方を説明します。