コラム

IDPOSデータ活用入門第5回

コラム

「買上点数アップの考え方と留意点」

今回は、1回の買い物における買上点数アップの考え方を説明します。
2018年後半から、スーパーマーケット(SM)の女性20-50代で来店頻度は低下傾向にあります。働く女性が増え、忙しさから日常の買い物に行く時間が減り、ECや宅配も伸びています。SMでは1回の買い物で平均12点、ドラッグストア(DR)では平均7点購入されますので来店頻度が減った分、買い物1回の買上点数が増えないと(1品単価が変わらないとしたら)、売上が減少してしまうのです。
流通経済研究所の調査ではSMの買い物の80%は非計画購買と言われています。頻度が減少する中、旬の食材を生かしたメニューや食シーンを想起させることで食卓を豊かにする関連商品を提案したり、ついで買いされる商品の買い忘れを防止したり、また情報提供やPOPなどにより「そのお客様にとっての商品の価値」に気付いて頂くことで、点数アップにつなげる活動が大切です。

非計画購買を起こすためには、計画購買が満たされることが前提です。
チラシ商品が早い時間に売り切れている、或いは来店目的であるリピート率が高い商品が欠品しているといった状況では買い物に来た目的が果たせない、ことになります。
注意したいのは自店の上位顧客の来店時間です。一般的に年代が上がるほど、SMへの来店時間は早くなり、平日は60代では11時、70代以上では10時にピークが来ます。この時間帯にシニア層の好むアイテムの品出しやお惣菜であれば提供が間に合っていないと機会ロスを起こす訳です。

買上点数を上げるためには支持率(買上率)の低いカテゴリーがあれば、品揃え改善、棚割りの見直しを行います。
この時入り口となるサブカテゴリーからどのように誘導・配置するのか、サブカテゴリー間の併買分析を行い、連動性を高めるゾーニングを検討します。
たとえばオーラルカテゴリーの入口になるのは歯磨きカテゴリーですが、歯磨きから洗口液やデンタル用品などの予防系サブカテへの連動性を高めることで点数アップが図られます。

点数アップに向けSMでは週別に歳時や季節指数から、旬の食材、売り込む食材を決め、同時購買分析から一緒に買われるアイテムを発見して、メニューを構成するアイテムやお酒やデザートまで含めて食卓を豊かにする提案としてクロス展開します。
この時、隣に並べるだけでなく一緒に調理する(喫食する)とどのように美味しく健康にいいのか、を一言POPで伝えるなどの工夫が欠かせません。

SMでは刺身売場にわさびや刺身にお勧めのお醤油、大葉などの関連陳列を行っているのをよく見かけますが、刺身の置いてある冷ケース奥の上に置いてあると、下を向いて商品を選んでいるお客様には気付きにくく、また高齢者に取りにくい場所だと思ったほど同時購入が起きません。お肉売場で「焼き肉のたれ」のクロスもよく見ますが、焼き肉のたれが特売アイテムだと「たれは家にあったかな?」という気付きを与えることはできても、特売売価を知っているお客様は通常価格では購入につながりません。
メインの商材にクロス展開するアイテムを選ぶ際は売価変動が極端に大きなものを避け、同じ売れ個数ならリピート率が高いアイテムを選ぶべきです。再購入につながる可能性が高いからです。

これらは一緒に並べているだけでもお客様に意図を理解頂ける例ですが、そうではないケース、何故、この商品がここに置いてあるのか、謎の売場も散見されます。
たとえば、今(執筆時、2019年3月1週)、関東~九州でピークを迎えている花粉症対策売場、鼻炎薬を買いに来たお客様に、アレルギー用目薬、点鼻薬、マスク(高機能なもの)、花粉の侵入を防ぐスプレーや高保湿のティッシュなど医薬品から日用品まで総合的な生活ソリューション提案をすることで点数アップにつなげています。
鼻炎薬購入者の併買分析の結果を背景にした売場作りなのですが、軽失禁用品の併買リフト値も実は高くなっています。これはくしゃみが引き金になり尿漏れが起きるためなのですが、鼻炎対策エンドに何の説明もなく軽失禁アイテムが展開されていると違和感を感じる方も多いはずです。「辛い花粉の季節、くしゃみがきっかけのちょい漏れを快適」に、というPOPがあれば、去年の今頃を思い出して購買につながるかもしれません。
また子供用のお薬やマスクも一緒に展開し、「お子様を花粉から守りたい」、とお伝えすることで家族全員のお悩みやニーズに応えたり、高保湿ティッシュも自宅用の箱型に加え、外出時のポケットティッシュも展開して(3個パックなど)、対象場所を広げる提案を行うことも点数アップに大切です。

クロス展開は店別の同時購入率の違いを見てうまく行っている店舗とそうでない店舗の展開法の違いを確認し、うまく行っている事例を横展開する必要があります。

点数アップにはバンドルやミックスマッチなどの販促策も有効です。
この時、1回に何個買うのか、そしてその組み合わせは何と何なのか、をデータから導きます。
例えば、夏場の熱中症対策として経口補水液がありますが、シニア層の方は平均して1回に3本、6-8月のシーズンに1.6回、計4.8本購入されます。この時6本単位でバンドルすることで大きく売上数量を伸ばした事例があります。1回の点数を上げ、かつ頻度が落ちなかったためです。
これは同じアイテムを6本にした例ですが、複数アイテムがある場合、どのアイテムとどのアイテムの組合せが買われ易いかは流入流出(同期間併買)分析で調べ、購買実態からみた人気のある組合せ(売りたい商品ではなく)を提案します。
流入流出分析は回を改めて詳しく解説します。
他に一緒に買って頂きたいアイテムは一緒に買って頂くとボーナスポイント付与、といった施策も有効です。

ここまで、お客様の買い物全体を因数分解し、各要素の改善策を解説してきました。
次回からはカテゴリー毎の因数分解、データの読み方、改善策を解説します。