コラム

IDPOSデータ活用入門第7回

コラム

「カテゴリー因数分解からの打ち手」

 第6回コラムではカテゴリーの因数分解について述べましたので、今回は要素ごとの打ち手について説明します。

 前回コラムで取り上げた歯磨きカテゴリーの課題は買上率でした。
買上率に課題がある場合は、「歯磨きを買って頂くお客様を増やす」ための方策を検討します。
歯磨きのように多くの人に必要なカテゴリーであれば、何故買って頂けないのか、店別の買上率から売場レイアウトがよくないのか、売場まで行ったが品揃えが悪いのか、探しにくいのか、売価が高いのか、等ベーシックな要因を再点検します。
その上で歯磨きを機能用途や価格帯で分け、どのサブカテに課題があるのか、どの性年代の支持が低いのかを掘り下げます。
弱点性年代が分かれば、その性年代にとって新規の入口になるアイテムを分析して、チラシやデジタル販促を用いて売場に行って頂くための施策を取ります。

季節商品であれば、早期展開が挙げられます。
第2回コラムでも取り上げましたが風邪薬は10月中旬からシーズン初回購入者(トライアル)が上がります。
来店頻度を考えると少なくとも10月初旬までにしっかりと売場展開を図っておかないとお客様に気付いて頂けず他店で購入されてしまいます。

また、気付けば買って頂けるついで買い商品やリピート率が高いのに認知の低い商品は露出の強化が考えられます。
定番以外に多個所陳列したり、お試し価格、試食・試飲、POP等でトライアル頂くきっかけを作り購入人数を増やすのです。

関連カテゴリーとの併買を促す仕掛け(クロスMD、レシートクーポン、誘導POP)も有効です。特にスーパーではメニュー提案によって購入人数を増やす取り組みが盛んに行われています(例:冷やし中華麺に錦糸卵、ハム、紅ショウガなどのトッピングを一緒に展開)。
また、CRMならではの取り組みとして過去購入者に再購入を促す施策や購入頂けそうな方にサンプリングも考えられます。
ドラッグストアでは、要指導医薬品・1類医薬品は薬剤師がいる時間帯しか販売できませんが、薬剤師不在の時間帯に求めに来たお客様に対して代替できる商品の展開・訴求をしっかりと行う事もカテゴリーの購入人数拡大に必要な事と考えられます。

 次に、因数分解の購入頻度に課題がある場合には「頻度(回数)アップ」の打ち手をとります。
まずは常に提案のある、鮮度のある売場作りに心がけます。
例えば、殺虫剤カテゴリーでは時期によって売れる商品(サブカテゴリー)に違いがあります。「虫よけ」「ハエ・蚊」「ゴキブリ」が早く、その後に「ダニ・ノミ」関連商材、その後に「不快害虫(アリ用、クモ用、蜂用)」と虫の種類で売れるタイミングが異なります。また同じ「虫よけ」でも剤型によって動き出しが異なり、スプレータイプよりも吊り下げ型が早いです。
シーズン初期に作ったプロモーション売場をそのまま維持するのではなく、サブカテ毎に需要の上がるタイミングに合わせて前面に出し、売場の鮮度を維持する事が重要です。

また、つい忘れがちなものや予防系の商材はリマインドを行うことが有効です。
お客様毎の購入日から、必要になる少し前にメール等でリマインドを行う、例えば子育て層は洗濯槽クリーナーを1-2ヶ月の間隔で購入する方が多いのでその方の間隔に合わせて少し前にリマインドします。
また、ビタミン剤や健康食品、ダイエット食品等すぐに顕著な効果が実感しにくいものは、続けて初めて効果が出ることをお知らせし、励ましを通じて離脱者を減らす取り組みが考えられます。その際、効果が出る前に起きる変化を示し、こんな変化が出ていれば効果はもうすぐ、続けましょう、のように励ましていきます。
こうしたリマインドを行う上で有効なツールがMA(マーケティングオートメーション)です。MAツールは個別選択的にメールやPUSH配信を自動的に行う事が出来るので購入者のその時に適した情報提供を行えます。

 続いて、1回あたり買上点数に課題がある場合の打ち手は「まとめ買いを促す」こと、具体的には「バンドルやミックスマッチ」が挙げられます。
バンドル販売をする際は2個でお買い得と言うだけでなく、2個買う理由を具体的に提案します。
例えばUVケアであれば顔用と体用、髪用、また自分と家族・子供用を提案します。ハンドクリームであれば自宅用とポーチ用、普段用と就寝前のケア用、芳香剤であれば部屋数分、またお薬では2個で完治(を目指す)のような提案です。

 また、年間の購入頻度よりも1回あたり買上点数の方が高いというカテゴリー・ブランドでは、まとめ販売の提案は必須となります。
例えば、栄養機能食品で代表的なあるブランドは年間の購入頻度が2.25回に対し、1回あたり買上点数が2.95個です。この場合もう1回購入頂くよりも、4個以上のバンドル販売を行う方が売上増につながり易いです。現時点でも1度に3個弱購入されているので、バンドルの単位が3個では少な過ぎ、4個、6個などで購入頂くべきです。

 最後に、平均売価に課題がある場合は「高機能・高付加価値提案」が1つの方向性になります。
高機能・高付加価値の商品は並べるだけで売れるものは少なく、カテゴリーによっては接客を必要とすることもあります。納得の上リピート購入して頂けると来店目的の創出につながります。この時、高機能品購入者のプロファイリング(併買リフト値分析の活用)により、購入してもらえそうな方を探し、個別アプローチ(DM、レシートクーポン、デジタル)する方法が考えられます。
また、SMでは生産者の顔や原料・作り方へのこだわりの見える化により高価格の納得性を高め、また冷凍できる商品についてはメガパックによる単価アップも考えられます。

以上、因数分解から得られた課題への打ち手について述べてきました。
次回、第8回コラムではIDPOS分析で重要な指標の一つである「買上率」について詳細を述べていきます。