コラム

IDPOSデータ活用入門第8回

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「IDPOSで最も重要な指標:買上率とは」

第6~7回でカテゴリーの因数分解について述べました。
今回はIDPOSで最も重要な指標の一つである「買上率」について詳細を説明します。

 買上率の定義は、期間中来店した人のうち、特定カテゴリーやブランドを購入している割合を表します。
例えば、あるドラッグストア店舗に期間中100人来店され、歯磨きを56人が購入した場合、歯磨きカテゴリーの買上率は56%です。買上率の逆数(44%)は不買率、すなわち、期間中に歯磨きを1度も購入していない割合になります。
不買率44%という数値は歯磨き習慣の普及を考えるとかなり高いと思われ、まだまだ自店で買って頂く余地は大きいと考えられます。

カテゴリー因数分解の数式は 
購入人数 × 購入数量/人 × 平均売価
です。
何故、購入人数ではなく買上率を使うのでしょうか?それには理由があります。
買上率は来店者を分母として集計しますが、店によって来店人数(ユニーク人数)はばらばらです。その違いを加味して比較できるのが買上率にするポイントです。
また、歯磨きカテゴリーの購入者が100人から110人に増えたとして、購入人数は1.1倍に増えた訳ですが、来店者は1.2倍に増えていれば、歯磨き購入者の伸びは来店者の伸びに及ばないことになり、買上率はダウンした、ことになります。
このように、よりカテゴリーの評価を正確に表す為に来店者の増減を加味した買上率という指標を用いるのです。

もう一点、「不買率が分かる」ことも重要です。
不買率により、そのカテゴリーは売上予算をクリアしていても、昨年対比でアップをしていても、来店者の中にはまだ買っていない人がどれくらいいるのか、伸ばす余地がどれくらいあるのか確認する事が出来ます。

買上率が高いのか、低いのかは、他の小売業のデータ・全国パネルデータとの重ね合わせや生活者調査(購入経験率・使用率など)を元に評価を行います。
単純な購入人数だけではどれくらい伸ばす余地があるのか把握する事が出来ませんので、買上率の重要性(IDPOSの強みの一つ)をご理解いただけたのではないかと思います。

買っていないに着目する

買っていないに着目する(図1)

図1は、ある小売様での歯磨きカテゴリーの実態を表記したもので、様々なパターンの「買っていない」人を表しています。IDPOSではこれらの数値を把握する事が出来ます。
年間の来店者を100人とした場合、歯磨き購入者は56人=買っていない人は44人(=不買率)になります。
重ね合わせにより伸ばす余地を把握し、そもそも購入していない人にどのように我が店で購入頂くかを検討します。

次に歯磨きを買っている56人のうち、2回以上(リピート)購入しているのは36人=1回しか買っていない人は20人であることも把握できます。
1回しか買っていない方の割合が多い場合は再度買って頂く為の施策の検討を行います(季節品などシーズン中1回しか買われないカテゴリーの場合はシーズン早めに購入してもらう、1回にまとめて買ってもらうなどが必要)。

次に、歯磨きを買っている56人のうち、1,000円以上の高価格帯の歯磨きを買っているのは8人で、低価格帯~中価格帯に留まる方は48人となります。
お勧めしている高機能歯磨きを買っている方はどういう方なのかを併買リフト値でプロファイリングし、高価格帯にランクアップして頂くにはどうすべきかを検討します。

また、歯磨きを買っている56人の内、歯ブラシ(洗口液)も買っている人は35人(13人)です。それぞれ買っていない人は21人(43人)という事です。
歯磨きを買っている、つまり歯磨き売場までは来ているのに、歯ブラシを買っていない人が37.5%もいるというのは大きな機会ロスと考えられます。ゾーニングの見直しやレシートクーポン・バンドル販売などによりまとめて買って頂く施策を検討します。
また洗口液であれば併用する効果を売場で訴求する必要があります。

 買上率から買って頂いている方はどれくらいか、買って頂いてない方はどれくらいか、伸ばす余地はどれくらいあるのか把握をしたら、具体的に「誰が」「何故」買っていないのか、を掘り下げて仮説を立てます(性年代、価格帯、商圏、顧客ランク、特定セグメントなど)。

次回、第9回目のコラムでは「性年代別買上率」について説明します。

参考:買上率と数量PI値との違いについて
POSデータの代表的な指標の一つに数量PI値があるかと思います。数量PI値はレシート1,000枚あたりの売れ個数を表すものです。
例えばあるブランド(単品)がレシート1,000枚で50個購入された場合、PI値は50となります。ただし、その50個を50人が1個ずつ購入したのか、10人で5個ずつ購入したのかは数量PI値では分かりません。1,000人のうち、50人が1個ずつ購入した場合の買上率は5%、10人が5個ずつ購入した場合の買上率は1%となり、買上率の方がより購入実態に近い指標と言えます。