コラム

IDPOSデータ活用入門第10回

コラム

「買上率アップへ5つの着眼点~①②」

 今回からカテゴリー(ブランド)の「買上率」を上げる5つの着眼点を取り上げます。

 1つ目は「弱点サブカテゴリーの買上率アップ」です。図2のボディソープの因数分解をご覧下さい。売上は昨対で101.3%と堅調ですが、買上率は98.5%とダウンしています。
つまり来店者の内、ボディソープを買う人の割合が減っていることを意味しています。こうした場合、最初に行うのはボディソープを剤型や形状、ブランド等のサブカテゴリー別に細分化し、どのサブカテゴリーの買上率が悪いのかを掘り下げることです。
 まず、剤型別では85.5%の構成比を占める主力の「液体タイプ」の買上率が大きくダウン、更に形状別でみると「液体の詰替え」がダウンしていることが見て取れます。こうした中でボディソープの売上が上っていたのは「泡タイプ」の売上が本体も詰替えも大きく伸びているため、と考えられます。
また、属性別でみると構成比が高く安価な「ファミリータイプ」は堅調ですが、「パーソナルタイプ」が大きく売上を落とし、売価の高い、「薬用タイプ」が売上を伸ばしています(但し、買上率は横ばいです)。
 以上から、好調な「泡タイプ」を伸ばすことが考えられますが、まだ買上率の絶対値が「本体」で3.1%、「詰替え」で3.7%と低いため、購入してくれそうな新規顧客を獲得する必要があり、「詰替え」で定着するまでは、主力である「液体タイプ」の不振にも手を打つ必要があります。

 続いて2つ目の着眼点、「顧客セグメント&弱点性年代の買上率アップ」を取り上げます。図3の左のグラフをご覧下さい。
ボディソープ(液体タイプ)の買上率は38.6%ですが、全年代で同じではなく女性30・40代では50%に達するのに対し、50代以上では年代が上がるにつれて買上率が下がり、女性60代では40%を下回っています。比較的多くの人に必要なカテゴリーであり、女性30・40代の買上率が50%で十分なのか、また女性シニア層に買って頂く余地はないのか、を検討する必要があります。
そこで必要になるのが調査データと市場データ(全国ドラッグストア・パネル)です。
メーカーのマーケティング部門では定性調査を行い、カテゴリーの使用率や購入経験率を把握されているはずです。右のグラフは女性20~60代のボディソープの使用率と買上率を重ね合わせたもので、この結果から20~30代の若年層を中心に使用率と買上率には20%程度の大きなギャップがあることが分かります。
 では弱点年代を克服するためにはどの様な提案が考えられるでしょうか?例えば、若年女性の買上率が課題である場合、若年層に支持されているブランド(アイテム)に課題が無いかを分析し、品揃え、売場作り、販促の改善を行います。
主要ブランドの性年代別買上率を集計し、若年が支持するブランドの中で市場で売れているのに自社で未導入のブランドはないか、また市場との重ね合せから自社で買上率を伸ばす余地があるブランドは何か、を分析します。弱点である若年層が支持するブランドが確実に品揃えされているのか、また売価についても市場売価とのギャップで売り負けていないかを確認、さらに売場での露出アップやアプリなどのデジタル施策などの販促強化で買上率を伸ばす施策を実行します。
 一方、シニア層に弱点がある場合、シニア層が支持している商品の品揃えは勿論ですが、シニアに取って見つけ易く手に取り易い棚位置(一般的にゴールデンゾーンの一段下が良いとされています)に置き、POPの字もユニバーサルフォントで大きく読み易くすることに配慮します。販促はチラシが効果的です。
 今回取り上げたボディソープカテゴリーの様に比較的幅広い年代で多くの人に必要なカテゴリーでは各年代の買上率が十分なのかを確認します。一方で、ベビーや介護、更にペットカテゴリーの様に、特定の人がそのニーズのある期間だけ購入するカテゴリーもあります。また、生活習慣病や膝関節の痛みに悩むなど特定の人が購入するカテゴリーもあります。そこで性年代だけではなく、お客様の生活や悩みごと、志向を踏まえた「セグメント」を設定し、買上率を伸ばす方法も考えられます。
 ベビー関連カテゴリーを例に取ると、女性25-39歳(祖父母世代の代理購買を除くため)でベビー用のオムツ、ミルク、スキンケアなどを購入している方というように、年齢と購買履歴から「子育てママ」セグメントを設定することができます。このセグメントに対し、サブカテゴリー間の併買(オムツ購入者にスキンケア等)を促進することで、赤ちゃんに必要なカテゴリーの買上率を効果的に上げることが期待できます(情報チラシ配布・試供品提供・レシートクーポン等で併買の穴を埋めます)。
 「子育てママ」セグメントは、赤ちゃんを様々な菌やカビ、刺激から守り、清潔な暮らしのために、無添加・自然派の衣料用洗剤や食器洗剤、空間除菌・除菌洗剤・洗濯槽クリーナーなどの除菌・防カビ関連商品、クイックルワイパーなどの使い捨て紙クリーナーをよく購入します。また外出時には虫刺されや日焼け、あせもからデリケートな肌を守るべく虫よけ、ベビー用UVケアなどを購入する特徴があります。ベビー関連カテゴリーに留まらず、「赤ちゃんのいる暮らし」で必要となる商品を情報チラシなどで提案することで、購入カテゴリーの幅を広げることも期待できます。
 女性30代のボディソープの買上率は55.6%ですが、
  「子育てママ」セグメントの女性30代では63.2%で
  「子育てママ」セグメントではない女性30代では48.9%
と大きな差があります。また、「子育てママ」セグメントは泡タイプの買上率が高くなっています。
 この他のセグメント例としては、過去の購買カテゴリーやブランドから「ペット飼育者」や「無添加化粧品嗜好者」「新商品好き」などのセグメントがあります。また、平日は17時以降に来店されるお客様を共働き世帯とセグメント設定し、店頭で時短・簡便を訴求し、冷凍食品や調理済み商品、惣菜、すすぎ1回や部屋干し洗濯洗剤などの購入を促進することも考えられます。セグメントを設定したアプローチの場合は、より快適な生活の実現へ向けたカテゴリーの枠を超えた生活提案をすることが重要です。

 次回、第11回目のコラムでは「買上率を伸ばす為に必要な5つの着眼点」の続きを述べたいと思います。