コラム

IDPOSデータ活用入門第13回

コラム

「買上率を伸ばす為に必要な5つの着眼点 ⑤既存商品の価値の再伝達」

 第10回から、買上率を伸ばす時の着眼点についてご紹介しています。今回は5つ目の視点「既存商品の価値の再伝達」について説明します。
 
 スーパーマーケットやドラッグストアの店内には多くのアイテムがありますが、その全ての商品の特長を生活者がきちんと理解している訳ではありません。売場にPOPやデジタルメディアを設置し、お客様に必要な情報をお伝えしているのですがそれでもその売場に行かない人には気づいて頂けません。買上率が低いカテゴリーはそもそも売場に行く人が少ないと考えられますので、棚割りの見直しと言った売り場の改善に加えて、売場に行って頂くことが必要になります。
 売場に行っていない方に売場に行って頂くには誰もが通る風除室やお店の入り口付近での情報提供、店内放送、関連の高い売場でのクロス展開、クロス陳列しにくい商品では誘導POP等が考えられます。1つ事例で説明します。
 春から夏にかけて制汗剤売場で見かける「汗ワキパッド」ですが、エチケット意識の高まりで制汗剤や汗拭きシートとともに併買されています。汗を抑える、という用途に沿った展開ですが、制汗剤売場には春夏のシーズンで2回程度しか立ち寄りがありません。そこで汗ワキパッドを購入している方が他にどんな売場に立ち寄っているかを「併買リフト値分析」で調べたところ、おしゃれ着洗い洗剤や、衣類処理剤カテゴリーが上位に来ていました。おしゃれ着洗いのコーナーに「大切な衣類を汗ジミから守る」というメッセージで汗ワキパッドをクロス展開したところ新規の獲得につながり買上率がアップしました。夏の衣類は薄手で汗ジミが黄ばみになると目立つのでこれを防ぎたい、お気に入りの洋服を傷めず着たい、という別のニーズを持った方が衣料用洗剤の売場にいたのです。そして衣料用洗剤の購入頻度は制汗剤よりも高いため、気付いて頂く機会が多いということになります。よく併買されている商品から新しい切り口が見つかることは少なくありません。
 また、「既存商品の価値を再伝達する」ことで、利用者の離脱を防ぐことも期待できます。リピーターがその商品を選ぶ理由を掘り下げ、商品の性能や特徴(機能価値)だけでなく、使うことで得られるメリット(使用価値)をそれに気付いていないお客様にお伝えするのです。
 衣料用洗剤の超コンパクト洗剤を使うことですすぎが減るので、「節水」になる、を訴求するのと洗濯が早く終わり「時短」になる、を訴求するのとどちらが生活者のニーズに沿っているでしょうか?働く女性が増え忙しい生活の中では、時短という切り口への反応が高いと想像されます。同様にジェルボール剤型を例に考えてみましょう。「ポンと入れるだけ」というキャッチコピーで「計量いらず」という機能価値が分かりやすい商品です。実際に使ってみると、あわただしい日常の中、洗剤の計量や本体への詰替えなど、ちょっとした家事の手間を減らすことができるメリットがあります。「時短」という使用価値を店頭でのメッセージに加えると、洗濯物の量が多いことが想定されるファミリーや、時短の加工食材や雑貨をよく購入されている忙しい方のアンテナにひっかかり、リピート購入を促すきっかけになるのではないでしょうか。
 店舗での商品表示やPOPに採用するメッセージには、商品の特徴だけでなく、その特徴のおかげでどのようなメリットがあるのかを選ぶとよいでしょう。リピーターの購入履歴から購入者像を掘り下げるだけでなく、利用者のアンケート結果、また使用シーンを想定して仮説を立てることもとても重要です。
 買上率を伸ばす5つの視点を解説してきました。次回からは、基礎化粧品のカテゴリーを題材に、より実践的な分析法をご紹介します。