コラム

IDPOSデータ活用入門第14回

コラム

「IDPOSを用いた基礎化粧品の分析アプローチ~その1」

 これまで「売上の因数分解」と「買上率アップの視点」についてご案内してきましたが、今回から「基礎化粧品」を題材にとり、メーカーや卸売業が、小売業にご提案する際の基本的な考え方と、IDPOSデータを用いた分析アプローチについて数回に分けて説明します。
 基礎化粧品は女性にとって日常的な必須アイテムですが、年代や季節、肌悩みやなりたい肌、ライフスタイルの変化(例えば妊娠⇒子育て⇒復職など)により選択するアイテムが異なります。また一度購入すると1~2ヶ月もつため、購入頻度は余り高くないのが特徴です。
 このように「顧客を知る・ ・ ・ ・ ・ことで適切なお勧めができ」、「頻度が高くない」カテゴリーは「誰に」「どのタイミング」で、「適切なアイテム」を提案するかを見極めることができるIDPOSがとても有効です。

 まず初めに基礎化粧品カテゴリーの位置づけを確認します。ドラッグストアでの年間売上金額上位40カテゴリー(食品、酒類を除く)の買上率をX軸に、リピート率をY軸にプロットすると、大きく3つのグループに分化します。1つ目のグループは右上、すなわち買う人も多く、頻度も高いグループです。こうしたカテゴリーは来店目的になる主力カテゴリーですが、その分競争が激しく、売れ筋の売価では競合他社に売り負けないことが重要です。
 勿論、コモディティ商材について価格以外の差別化要因の追求も大切です。売っているものは競合店と同じでも生活者の悩みやニーズと商品の価値を結び付けて「パーソナル化=自分ゴト化」するPOPの掲示や情報訴求もポイントとなります。
 2つ目のグループは左上に位置し、買上率は高くないがリピート率が高いグループです。このグループは必要としている人が繰り返し購入するカテゴリーで、ペットフード、ベビー用オムツ、大人のオムツ、軽失禁などです。このグループは、一度購入いただいた方にニーズのある間は継続購入いただくことが大切です。そのためにはリピート率の高いアイテムを欠品させないこと、次にサブカテゴリー間の併買を促進(ペットフードを購入している方に用品も購入頂くなど)して、来店目的を増やすこと、更に、このカテゴリーを買いに来店される方は頻度が高いので、目的カテゴリー以外の生活提案を行いカテゴリーの幅を広げていくことがポイントとなります。すなわち、ドッグフードを買っている方に犬とお散歩する際に必要な、ごみ袋、UVケア、制汗剤、虫よけ、筋肉痛の対策品などを総合的にご提案することです。
 3つ目のグループは買上率もリピート率も余り高くないカテゴリーです。今回取り上げる基礎化粧品やシーズン品が該当します。買上率もリピート率も高くないのに売上上位のこのグループの特徴は一品単価が高いことです。そのため、購買意欲の高まる適切なタイミングを逃さずに提案することが重要になります。鼻炎用薬、かぜ薬、制汗剤、UVケア等の季節品はシーズン1回目をわが店で購入いただくことがシーズンの売上の勝敗を決定するといっても過言でない程「タイミング」が重要です。

 次に基礎化粧品カテゴリーの特徴を確認します。第6回コラムでご案内したカテゴリーの因数分解を「基礎化粧品まとめ」と「美類別」で確認します。基礎化粧品まとめの買上率は61.4%と高いですが、美類別に見ると、ベーシックケア(メイク落とし、洗顔料、化粧水)の買上率はそれぞれ30%、乳液は10%に留まり、スペシャルケアに位置づけられる美容液、パック、フェイスクリームも約10%と決して高くありません。基礎化粧品はベーシックケアとそれ以外の美類で買上率の差が大きいことが分かります。加えて、ベーシックケアでも3美類すべてを併買している人はさらにその2割程度にとどまっています。
 もう一つの特徴は購入頻度が年2~3回しかないことです。メイク落としと洗顔料は年3回、その他は年2回程度しか購入機会がありません。一方、基礎化粧品の優良顧客はお店のロイヤルカスタマーの場合が多く、ある小売業では基礎化粧品優良顧客の65%がお店の最重要顧客というデータもあり、基礎化粧品はお店にとっても重要カテゴリーです。このように買上率、頻度(リピート率)共に高くないカテゴリーの支持を高めるポイントは、以下の3点です。
  ① 優良顧客なのに基礎化粧品を買っていない(購入額が低い)人を探したり、新商品好き
    の方に新商品情報を提供することで「カテゴリー新規」、「ブランド新規」を獲得
  ② 人によって異なる購買タイミングを逃さないこと(例えば化粧水を買われた方には
    使い切る少し前にアプローチすることが大事ですが7月に買った方と8月に買った
    方ではお勧め時期が異なる)
  ③ 各美類間の併買率を高め、ブランドのシリーズ使いをご提案することで顧客の育成、
    固定化を図る
 次回は基礎化粧品を購入している、あるいは将来購入いただけるターゲットとはどんな方なのかを大きく「新たな顧客創造」と「既存客の深耕」に分け、更に基礎化粧品への関与度を加えた5種類に分解して、それぞれのお客様にどのようなご提案をしていくべきかをご案内します。