コラム

IDPOSデータ活用入門第16回

コラム

「IDPOSを用いた基礎化粧品の分析アプローチ~その3」

 基礎化粧品を題材にIDPOS分析の流れをご説明する3回目になります。前回はA.新規顧客の開拓のうち、ターゲット別にA-(1)ストア優良顧客の不買&不支持の克服、(2)カテゴリー新規客の発見についてご案内しました。今回はA-(2)カテゴリー新規客の発見の方法についてご説明します。
 A. 新規顧客の開拓
  A-(1)ストア優良顧客の不買&不支持の克服
  A-(2)カテゴリー新規客の発見
 B. 既存顧客の深耕
 C. 離反客の呼び戻し
 A-(2)の準優良顧客で基礎化粧品を買っていただけそうな方を探す方法として、顧客プロファイリングという手法があります。顧客をプロファイリングするための情報源として最もよく使われるのは会員情報の性年代や商圏情報です。「トレンドに敏感なF1層をターゲットに開発…」のような表現を耳にされることは多いかと思います。2つ目は買い物の仕方による分類です。月間の来店回数、購入額、曜日、来店時間などの情報です。例えばドラッグストアで平日は18時過ぎにのみ来店されている30代女性は、フルタイムで働いている可能性が高く、毎週チラシ立ち上がりの平日午前中に来店される30代女性とはニーズが異なると推定されます。最後は何を買っているのか、つまり買い物内容です。これらを組み合わせてプロファイリングを行いますが、顧客の実像に迫るには「何をどのように買っているか」という情報が最も重要です。同じ30代の女性でフルタイムに働いていても、3年以内にベビー関連品を購入しているかどうかで大きくそのニーズが異なることが分っています。ベビー関連品を購入している30代女性はそうでない30代女性に比べて、「赤ちゃん、子供を病気や原因となる菌、刺激から守り労わる」という明確な特徴があり、多くの人に必要な衣料用洗剤も購入するブランドが異なります。また、同じ70代女性でも介護用品を定期的に購入している方と1度も購入していない方ではお悩みや興味関心に違いがあると考えられます。このように、あるカテゴリー(ブランド)を購入している、していないという情報はお客様を理解し最適な生活提案を行う上で貴重な情報源なのです。
 あるカテゴリー(ブランド)を購入しているお客様が、一般のお客様と比較して他にどんなカテゴリー(ブランド)をよく購入しているかの傾向を探る分析を併買リフト値分析と呼びます。お客様が一緒に買われるものは何か?を知るという意味で「併」であり、一緒に売っている「併」ではないことにご注意ください。併買リフト値分析は同じバスケット内で一緒に買われる傾向の高いものを知る「同時・ ・購買」と、ある期間内に買われる「期間・ ・併買」に分かれます。顧客のプロファイリングには「期間併買」を用いることが一般的です。
 「同時購買」は同じバスケット(レシート)内で何と何を一緒に購入したかの情報から、同時に購入される可能性の高いカテゴリーや単品の傾向を知るために用います。スーパーマーケットではメニュー提案に基づくクロスMDを検討する際によく利用されますが、他にも購入頻度が低いカテゴリーで有効な手法です。例えば年間1~2回しか購入機会がない季節性の高いカテゴリーは、売場に来て頂いたまさにそのタイミングで関連するカテゴリーを洩れなく購入いただきたいためです。ただし同時購買には注意点が2つあります。1つ目は同じバスケット内で一緒に買われるものは何かを示すもので、既に買ってある家庭内在庫は考慮されない点です。ある買い物の次によく買われるものも分かりません。2つ目は買上点数が低い場合です。例えば平均の買上点数が3点の小規模ドラッグストアや専門店で同時購買を見ても組合せが少な過ぎて有効な指標にしにくいのです。
 これに対して期間併買は一定期間(分析目的によって異なりますが1-2ヶ月)の全買い物が対象になります。1-2ヶ月間に買い物された全てのカテゴリー、アイテムからお客様の「悩み」や「興味関心」、その「要因や原因」はどこにあり、その「結果」どうなったのかを推定するのです。基礎化粧品の場合、購入頻度は高くないものの通年で使用し、肌特性や肌悩みに応じたアイテムを選んで購入しているため「どんなニーズや悩みを抱えたお客様なのか」をある一定期間の併買状況から明らかにすることが可能になります。
 準優良顧客の中で基礎化粧品を買って頂けそうな潜在顧客を探す目的で、基礎化粧品の期間併買分析を行うとメイクアップ化粧品、ヘアメイク、化粧小物等の化粧品カテゴリーが上位ですが、続いてビタミン主薬製剤(ビタミンB2B6の肌ビタミン)、皮膚薬(ひびしもやけあかぎれ)、芳香消臭剤がランクインし、「内側からもケア」「肌が弱い」「身だしなみ」等の特性が見えてきます。こうしたカテゴリーを購入していながら基礎化粧品を購入していない人をターゲットにしていきます。
 基礎化粧品では範囲が広過ぎるので、例えば、重点ブランドの美白美容液を買って頂けそうな方を探してみましょう。美白美容液購入者が他によく購入しているカテゴリーを調べるとUVケアはもちろんのこと、美白歯磨きや美白ビタミン、美容ドリンクを一般の方より購入する傾向が高いことが分かります。また日傘、UVケア手袋、帽子などのグッズ類も買上率は高くないものの併買しています。そこで美白ニーズのある方はお肌のお手入れだけに留まらず、オーラルケアや身体の内面からのケア、外からの日差し防除に及ぶまで広範囲にわたり「美白」への関心が高い方と想定できます。よって美白美容液を新たにお勧めする対象者は、美白歯磨きや美白ビタミン、美容ドリンクを高頻度で購入しているが美白美容液を買っていない方をターゲットとして設定できます。
 同様に2~3月の肌が過敏になる季節に敏感肌化粧水を購入している方の併買から、敏感肌用ボディソープや入浴剤、無添加自然派の洗剤、ハンドクリームを購入している方が浮かんでくれば、そうしたカテゴリーを購入していながら化粧水は敏感肌用を購入していない方に、人知れず悩みを抱えている方に寄り添うメッセージと共に敏感肌用基礎化粧品の切り替えを促す施策が立案できます。
 ここ数年人気のリンクルケアは、アンチエイジング世代だけでなく、30~40代の美肌サプリや美容ドリンクを継続購入している美意識の高いエイジングケア予備軍に対して有効だという結果が顧客プロファイリングから得られています。そこで、美肌サプリを購入された方にレシートクーポンでリンクルケアをポイント付きでお勧めし、プラスワンアイテムとして活用いただくことで基礎化粧品へのキッカケづくりを行うことも可能です。
 このように買って頂けそうな方のグループを特定できたら、カテゴリー新規客はどの「単品」から入るのかを分析します。これによって買って頂きたい方にレシートクーポンやアプリ、DMを通じてアプローチする際に購入につながり易い単品を決めることができます。
 次回は「B.既存顧客の深耕」についてご案内します。