コラム
IDPOSデータ活用入門第18回
「IDPOSを用いた基礎化粧品の分析アプローチ~その5」
今回は基礎化粧品分析シリーズの最終回、離反者の呼び戻しになります。
C. 離反者の呼び戻し
これまで、効果的に新規客を獲得し(重点ブランドの入り口となる商品を適切なターゲットにお勧めする)、タイミングを踏まえてリピート促進し、使用する美類を広げてファンとして育成し固定化する活動の重要性について述べてきましたが、これらを行っても、一定の割合で離脱者が出てしまいます。ましてや新規獲得キャンペーンだけで、後は自然と自ブランドのファンになって頂ける、というはずはなく、半年間何もしないと新規客の半数以上が離脱するのが一般的です。
購入して半年以上経ってから、すなわち、購入頂いたアイテムを使い終わって4カ月以上経ってから再度購入頂くきっかけを作ることは、新規獲得と同じくらいの労力(コスト)が必要になります。離脱防止とはまず離脱させないための顧客育成活動であり、それらを行った上で、ある一定以上購入頂いた、「ご愛用者」の離脱防止が中心になってきます。ご愛用者とは「継続して」基礎化粧品の「複数美類」の「本体」を購入している方になります。ストア全体の優良顧客で基礎化粧品を購入していないお客様の約4割は、以前は購入があった中断者というデータからも離脱防止の重要性が分かります。ここで、第4回コラムでご案内したリピートしない3つの理由
1.飽きる
2.忘れる
3.卒業する
を思い出して下さい。「飽きる」は特に食品(中でも菓子や飲料)で顕著で、どんなに好きなものでも時間が経つと嗜好が変わり、魅力的な新商品に目移りしがちです。食品では飽きさせないために、季節に応じて目先を変え、新しい飲み方・食べ方を常に提案し、健康によいなど続ける理由をお伝えしていきます。同じように基礎化粧品でも、季節の変化などで何となく効果を感じにくくなったタイミングで話題の品を勧められれば試してみたくなるものです。物足りないと感じていた時にもらった新商品サンプルが肌に合えば、「簡単に乗り換えが発生」する可能性もあります。飽きを感じ始めたお客様はこれまでよりも購買間隔が長くなり、スペシャルケア品を購入しなくなりますので、MA(マーケティング・オートメーション)ツール等を使って、今お使いのものが無くなる前にアプローチすることが肝要です。その際、漫然と既存品をお勧めするのではなく、季節に応じた効果的な使い方などのアドバイスを行い、合わせてステップアップできる新商品、新シリーズ、新成分配合等を切り口に先手を打ってご紹介していきます。こうしたアプローチは通販型の化粧品ではこれまでの購入内容と育成シナリオに沿って普通に行われており、店舗小売業でも取り入れるべきです。
2点目の「忘れる」、これは無くなる前にMAでリマインドすることと化粧品を買いたくなるタイミング(お給料日後、イベントの多い12月や3月、シニア層であれば年金支給日後)での販促という両面が考えられます。生協の宅配業態で、OCR注文用紙に以前購入した商品がマークされていて注意喚起されていますが、購入頻度の低い基礎化粧品では、こうした施策も買い忘れ防止にとても有効です。更にその企画回にお買い得になっている商品にもマークされており、過去購入品がお買い得、という情報を知らせて購入の後押しをしてくれます。
最後の「卒業」ですが、基礎化粧品ではシリーズ使いして頂いた方がシリーズごと変更することがあります。年齢やライフステージの変化により肌の状態、外出や装う機会、化粧品に使えるお金等が変化するためで、同じ30代でも妊娠・子育て中の方とそうでない方には大きな違いがあります。同様に同じ60代でもフルタイムで働いていた時と退職した後では選ぶブランドに違いが出てきます。こうしたブランドごとの切り替えは、今使用しているアイテムの残量から徐々に起きるので要注意です。その切り替えの方向性を読み取って適切な卒業先をご案内できれば、少なくともカテゴリーそしてストアからの卒業を食い止めることができます。
「卒業」にはライフステージの変化が大きく影響します。特に化粧品のブランド切り替えと相関が高いのは妊娠、出産、復職そして定年退職になります。妊娠により肌が敏感になり、乾燥を感じ易くなると言われています。また出産に伴い、赤ちゃんの繊細な肌に触れることのできる無添加自然派の化粧品が好まれるようになります。子育て中は、日常的に忙しくなるため、手の込んだお手入れは難しく、オールインワンタイプなど簡便ニーズも高まります。IDPOSデータを用いて、マタニティ用品、新生児用のミルクやおむつ、用品などの併買から、ご愛用者のこうした変化を推定し、その変化を踏まえた対応を行います。IDPOSデータはこうしたライフステージの変化を捉えることのできる期間(妊活から妊娠、出産、子供が3歳になるまでをカバーできるミニマム5年間程度)を保持すべきと考えられます。
ご愛用者の離反にはそれぞれの理由があり、単に同じ地点(過去購入ブランド)に呼び戻しても戻ってこない場合もありますので、IDPOSデータとMAツールを組み合わせたきめ細かい対応が必要になります。
以上、基礎化粧品の特徴と分析アプローチについてご案内いたしました。
次回は食品の中でも買上率、リピート率ともに高い「ヨーグルト」分析についてご説明いたします。