コラム
IDPOSデータ活用入門第19回
「IDPOSを用いたヨーグルトカテゴリーの考察」
今回はスーパーマーケットの売上の中でも上位にランクし、購入頻度も多い「ヨーグルト」カテゴリーについてID-POSの観点からの分析を紹介します。
スーパーマーケットの日配・グロッサリー部門において、「ヨーグルト」カテゴリーは売上数量がトップ、売上金額は「米」に次いで第2位にランクしています。さらに年間購入頻度は18.7回で月に1.5回購入され、売上Aランクの中では19.1回の納豆に次いで第2位です。19年2月の買上率とリピート率の散布図でも納豆や菓子パン・食パン・豆腐などの日配食品と同様に買上率・リピート率が高い点が特徴です。買上率が高く(多くの人が購入)、リピート率が高い(何度も買いに来る)カテゴリーであるため、コンビニエンスストアやドラッグストアなども強化を図っており、他業態との競争も激しいカテゴリーです。これまでの朝食に食べる、子供と食べる、スイーツ感覚で美味しく食べる、といったスーパーマーケットが得意としてきた食シーン訴求に加えて、ヨーグルトの健康効果が注目されているのです。特定保健食品や機能性表示食品のヨーグルトも発売され、整腸作用だけではなく、内臓脂肪の減少、免疫力の向上、尿酸値を下げるなどヨーグルトの健康目的が多様化し、色々な性年代のお客様の健康のお悩みに応えられるようになってきました。ドラッグストアはこうしたヨーグルトの健康効果と業態の親和性が高いため、特に注力しています。特に外出先でも手軽に飲めて喫食シーンを選ばないドリンクタイプでは顕著です。
あるスーパーマーケットでヨーグルトの単品別売上金額を確認すると、トップは大容量タイプである「明治ブルガリアヨーグルト400g」です。一方、単品別のリピート率を確認すると、50%を超えるのはR-1やLG21、ガセリ菌SP株ヨーグルトといった、「ドリンク」タイプの健康志向ヨーグルトでした。リピート率50%は半数近くの方が月内に同じ単品を繰り返し購入することを意味しています。免疫力アップや中性脂肪対策など、続ける目的を明らかにすることで高リピート率を獲得していると考えられますがそれでも半数近くの方は月内に一度きりです。もう1つの特徴は、「明治プロビオR-1 低糖低カロリー」や「明治プロビオLG21 低糖低カロリー」のような“低糖”“低カロリー”の商品は通常タイプに比べて更にリピート率が高い点です。食べ続ける・飲み続けるには、低糖・低カロリーの方が好ましいと考えられているためです。
では、大容量タイプやカップタイプ等の固形タイプヨーグルトのリピート率を高め、さらに売上を伸ばすためにはどうすればよいでしょうか。
その手掛かりを得るために「明治ブルガリアヨーグルト400g」購入者の同時リフト値分析を行います。この分析は該当商品を買う人が同じバスケットで他に何をよく買うのかを明らかにして、購入者のプロファイリングや一緒に買って頂き易いアイテムを知りクロスMDのヒントにする目的で行います。結果から、以下の4点を読み取ることができます。
① ひじきや野菜、中でもゴボウ、切干大根、かぼちゃ等の食物繊維を多く含むアイテムのリフト値が上位にランクし、食物繊維摂取=整腸意識が高い人が購入していると考えられます。整腸効果を得るためには続けることの大切さを訴求する必要があります。
② プレーンタイプの商品を続ける場合、飽きさせない工夫が大事です。ハチミツやきな粉、ジャムなどヨーグルトへトッピングできるアイテムのリフト値が上位にあることから、食べ飽きないように工夫していることがうかがえます。メロンやりんごなどの旬のフルーツで美味しく食べる提案や旬のものが少ない時期には通年ある、プルーン(ドライフルーツ)や冷凍ブルーベリーなどを加えて健康効果をプラスする提案(プラス鉄分、プラス目にいい成分)が考えられます。
③ 当然ですが、シリアルやバター、鮭切り身などのリフト値が上位にランクし、食パンやハム・ソーセージ・納豆は併買率が高く、朝食を想起できるカテゴリーも特徴です。
④ デザート、ホイップクリームなど子供のおやつを想起できるカテゴリーも見受けられます。
スーパーマーケットはドラッグストアに比べて来店頻度が高い点を強みに、ヨーグルト売場から商品特徴や期待できる効果、続ける理由(低糖・低カロリー)、場面想起(朝食・おやつ)、飽きない工夫(トッピングや旬のフルーツ)を提案することで更にリピート率の向上を期待できるのではないでしょうか。
一方ドラッグストアは、近年では甘酒の拡売や、食用油では低コレステロールタイプやアマニ油・えごま油、その他の食品でも減塩・低GIタイプの商品を揃え、食品からの健康訴求発信を強めています。
最後に季節指数の違いを説明します。スーパーマーケットでは免疫力アップを目的とするドリンクタイプを中心に12-1月のインフルエンザ流行期にヨーグルトの季節指数が高まります。お子様の受験対策として、空間除菌やマスクなどと対応を強化すべきです。一方、ドラッグストアの特徴は冬に加えて3-4月の伸びが顕著であることです。これは花粉症対策としてヨーグルトの拡売を図っているためです。例えばR-1は1本だけではなく、12本の箱を売場に大量陳列してまとめ買い促進を強化しています。最近では夏バテ・夏風邪予防訴求でヨーグルトの裏シーズン強化を図っています。
以上、ヨーグルトカテゴリーのリピートを中心に述べてきました。次回は、「リピート率の重要性」について説明します。