コラム

IDPOSデータ活用入門第20回

コラム

「リピート率の有効活用」

 今回からID-POSならではの分析である、「リピート率」の活用をシリーズで取り上げます。初回のコラムで下記のように書きました。
 「IDPOSならではの情報として、繰り返し買われているものは何か・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・、を知ることができます。わが店で繰り返し買われているものは、そのお客様にとって来店動機・ ・ ・ ・となる商品ですから、欠品させないようにし、大切にする必要があります。商品の改廃を行う際に、たとえ、全体ではそう売れていなくても、購入額の多いお得意様が繰り返し購入している商品があるとしたら、一方的なカットを行わないように注意する、ことも重要です。繰り返しの購入を示す指標を「リピート率」と呼び、これをわが店独自の売れ筋作りに生かすことができるのです。」
 リピート率の重要性はこの通りですが、定義やリピート率をどのように生かすのか、お客様にリピート頂くにはどうしたらいいのかを述べていきます。まず、リピート率の定義です。
 このコラムでのリピート率は (延べ人数-ユニーク人数)÷延べ人数 で算出します。あるアイテムを同じ人が1ヶ月に5回買っても10回買っても1人は1人としてカウントするのがユニーク人数、これに対して5回買った場合は5人としてカウントするのが延べ人数です。例えばあるアイテムを、Aさんは5回、Bさんは1回、Cさんは4回購入したとするとユニーク人数はA、B、C の3人、延べ人数は5+1+4 で10人です。この場合リピート率は (10-3)/10 =70% と計算されます。リピート率にはこの他にも定義があります。例えば、2回以上購入者の割合をリピート率ということもあります。上記の例では2回以上買ったのは3名中2名なので、2÷3=66.7% と計算されます。これはどちらが正しいということではなく、どのように定義しているか、の違いですのでリピート率という言葉が出てきたときにはその定義を確認し、目的に応じて使い分けるようにして下さい。
 さてリピート購入頂くことが如何に大切かについて、図1の簡易モデルをご覧下さい。

 最初の期間①に100人の人に初回購入頂いて、リピート率が10%の場合、期間②では100人中10人がリピート購入します。更にその次の期間③では10人中、1人しかリピートせず、期間④では計算上はゼロ、となります。最初の100人はトライアル人数、そして100+10+1=111人が総購買回数になります。同様に期間②、期間③でそれぞれ新規に100人獲得したとすると、トライアルしたのは計300人、総購買回数は333人となります。トライアル人数は300人で同じでもリピート率が20%になると、総購買回数は375人になります。同様にリピート率が70%だと総購買回数は877人まで上がります。最初に300人のトライアルを獲得するのに必要な工数(費用)は全く同じですから、リピート率が高いアイテムの方が投下した費用に対しての見返りが大きい、ということになります。
 また、リピート率が10%から20%に上がっても総購買回数は42人しか増えませんが、リピート率60%から70%に上がると165人も増えます。これは低リピート率のアイテムをテコ入れするよりも、高リピート率アイテムを更に高くする方がROI(投資への見返り)が大きいことを意味しています。勿論、リピート率はアイテム、ブランドごとに固定ではなく変えることができます。その手法はシリーズ後半で紹介します。
 リピートの重要性を確認頂いたところでその活用法です。まずは「リピート率の基準を作る」ことから始めます。リピート率を測る期間をどのように設定するか、です。例えばスーパーマーケットで油やみそなどの調味料は使い切るまでに1カ月程度かかりますので、1ヶ月間でリピート率を測ると低めに出てきます。これに対して、軽飲料や菓子パンは毎日でも飲んだり食べたりできますので、高めになります。勿論、同じ飲料でも2リットルの6本ケースと500ミリ1本ではリピート率が異なります。そのためカテゴリー毎にリピート率の基準値を定める必要があるのです。来店頻度の高いスーパーマーケットの食料品では1ヶ月で測り、それよりもやや来店頻度の低いドラッグストアでは食品以外は3~6ヶ月を基準にします。例えば、ビタミンB1剤カテゴリーで最も売れている商品が3ヶ月分だとすると、その2倍の期間、6ヶ月で測定します。カテゴリー毎にリピート率を測定する期間と季節に応じた基準値を設定しトラッキングしていきます。
 それではあるカテゴリーでリピート率が高いアイテムが識別できたとしたらそれをどのように活用すべきでしょうか? 図2はあるスーパーマーケットでのヨーグルトの売上構成比70%までを占めるAランク、47品のリピート率を示しています。

 期間は1ヶ月、この間に1個でも売れたアイテムは230になります。売上1位のアイテムはリピート率で49位、売上2位ではリピート率が153位と低くなっています。一方、リピート率1位の商品は売上Aランクに入っておらず、リピート率2位の商品は売上で38位となっています。売上とリピート率にはほぼ相関がないことが分かります。この時着目頂きたいのが、全店で扱いがあるかどうかという点です。売上27位の商品はリピート率で3位ですが、全店で扱っていません。これは明らかな機会ロスと言えるでしょう。売上上位品でリピート率が高いアイテムは全店に導入し、欠品しないように注意を払うべき、となります。
 Aランクの下位に位置する高リピート率アイテムはどのようにすべきでしょうか?これらはリピートが高いのでトライアルを取る工夫をすべき、です。例えばリピートが高いことをお知らせするPOPを付けて目立たせたり、試食試飲の機会を設けたり、お試し価格やボーナスポイントの設定等が考えられます。非冷品でしたらアウト展開もできます。元々リピート率が高いので購入頂く人を増やせば安定した売上増につながるはずです。
 他にもBCランクでリピート率が高いアイテムは一方的にカットしないようにすることも大切です。どうしても切り替えざるを得ない時には事前に代替品を案内するなどの工夫も必要です。
 以上、アイテム別リピート率の読み方について述べてきました。次回は現時点でリピート率が低い或いは低下した場合に、これをどのように高めるか、について取り上げます。