コラム

IDPOSデータ活用入門第23回

コラム

「ID-POSを用いた季節商材(シーズン品)の分析視点②」

 今回は引き続き季節商材(シーズン品)の分析視点について取り上げます。前回は、季節商材の分析を行う際の基本的なポイントを述べましたが、今回はそれを深掘りします。
 近年、蚊の活動さえ抑制されるほどの酷暑(18年夏)や暖冬(18年冬)・長雨冷夏(19年夏)など、気象激変の時代に突入したといっても過言ではないほど気候が乱れており、小売様をはじめ季節商材をお持ちのメーカー様は非常に厳しい戦いを強いられているかと思います。こうした環境下では、シーズンのピークになる前に少しでも売上を上げ、天候不順の影響をなるべく抑える「前半貯金型の計画作り」が重要になっています。前半貯金型を目指すには、そもそも早く動き出すサブカテゴリー・用途機能は何か、その購買者はどんな方(性年代やセグメント)で、どの売場に現れるのか(どこで気付きを与えるべきなのか)を明確にする事が求められます。
 まずは容量の違いによって動き方が異なる点を確認します。前回コラムで総合感冒薬のトライアル・リピート分析を取り上げました。総合感冒薬でシーズン当初によく動くのはどんな属性をもつのでしょうか?そこで総合感冒薬を対象者別(ファミリータイプかパーソナルタイプか)、容量別(大容量か小容量か)に分けて、トライアルの動きの違いを確認します。

 図1から「ファミリータイプ」「大容量」の動き出しが早いことが読み取れます。自身や家族が風邪をひいたので購入するという、治療薬の側面と家族が風邪を引いた時に備えて購入するという常備薬、予防薬として購入されている事が推測され、本格シーズンイン前からの買い置き需要をしっかりと掘り起こしたいところです。特に子供用との併買促進は有効です。また、シーズン後半の風邪が本格的になると「パーソナル」タイプの動きがメインになります。このタイミングでは風邪の症状に適した商品の提案をしっかりと行う事が必要です。また当然でありますが、シーズン後半になるにつれ、ファミリータイプ・パーソナルタイプ共に「小容量」が売れます。風邪の季節の終盤に容量の大きいものは使い切らないのではないかと考えるためです。また、前回のコラムでみたように年明けになるとリピート購買者(今シーズン既に売場に来たことがある方)の方が売場に多く立寄っています。タイミングによって立寄る方・求めているものが異なりますので、売場の鮮度維持を図るためにもシーズン当初のプロモーション売場をそのままにするのではなく、柔軟に組み換えを行うことも検討したいところです。
 次は、夏場の代表的な季節商材である制汗剤カテゴリーを題材に、サブカテゴリー(剤型)によるトライアルタイミングの違いについて取り上げます。まずは、制汗剤カテゴリー全体のトライアル・リピート分析の状況を確認します。

 制汗剤は気象情報の重ね合わせとして「不快指数」を用いています。制汗剤のトライアルが動き始めるのは2月下旬~3月初旬です。この時期、まだ不快指数は低いですが、気温をみると最高気温が20度を超え始めるタイミングです。その後、徐々にトライアルが上がり、5月中旬に不快指数が80(暑くて汗が出る)を超えたタイミングでトライアルが跳ねることが確認出来ます。リピートもこのタイミングで上がります。その後、不快指数が85(暑くてたまらない)を超えると再度トライアル・リピート共に跳ねあがり、梅雨明けに合わせてピークを迎え、その後(夏本番になると)トライアルとリピート購買が逆転をする形となっています。
 これを剤型別に分けてトライアルタイミングの違いを確認してみましょう。

 図3を見ると、剤型によって動き方が大きく違う事が確認出来るかと思います。
 春先の早いタイミングで動き出すのは「クリスタル」「ロールオン」で次いで「パッド」「クリーム」が動きます。その後夏本番で売れる剤型は「シート」「ローション・ミスト」となっています。「スプレー」に関しては「シート」同様に梅雨明けタイミングがトライアルのピークですが、シーズン前半からも動いています。
 この事から春先から「シート」タイプを前面にプロモーションで打ち出すのは適さないことが分かります。シーズンインのタイミングでは春先に売れる剤型を中心に視認性のアップを図っていく必要があります。また、シーズンインの商材を売り込む際に、併せて次のタイミングで売れる剤型も一緒にお勧めして買って頂く事も重要です(例:クリスタルを春先に買って頂く際にパッドの併用提案を行う)。
 売場への立寄り頻度が少ないので、次に山が来る剤型を一足前に買って頂く(剤型のリレー)事で買上点数アップを図るのです。
 以上のように、近年季節商材は「前半貯金型」の考え方が重要であり、その為にはシーズン前半に動くものをしっかりと把握し、そして季節の移り変わりに伴う購買内容の変化を捉え、一足前にリレーさせるという考えが重要であることがご確認頂けたかと思います。
 次回は、季節商材(シーズン品)の第3回目(最終回)となります。今回はタイミングによる商品の違いについて見てまいりましたが、3回目はシーズン導入期に購入する人とシーズンピーク時に購入する人の顧客像の違いについて中心に取り上げたいと思います。