コラム
IDPOSデータ活用入門第24回
「ID-POSを用いた季節商材(シーズン品)の分析視点③」
今回は季節商材(シーズン品)の分析視点の最終回です。前回は商品が売れるタイミングについて見てまいりましたが、今回はタイミングによる顧客像の違いを取り上げます。
例として花粉防御剤商品(花粉が鼻や目に侵入するのを防ぐ商品)のシーズン早期購入者(1月~2月)とピーク購入者(3月)の違いを取り上げます。まずは、購入年代層に違いがあるのか、です。
図1は、花粉防御剤商品の早期購入者とピーク購入者の性年代別買上率を比較したものです。これによると、ピーク時は女性20代の買上率が最も高いですが、早期購入者は女性40代がピークとミドル層が中心となっており、タイミングによって購入者の年代層が異なる事が確認出来ます。
次に併買リフト値分析から早期購入者とピーク時購入者の顧客プロファイリングを行います。図2からは下記の事を読み取れます(*併買リフト値分析の詳細は、コラム別回にて取り上げる予定の為今回は割愛致します)。
早期購入者では、花粉症関連カテゴリーの「漢方さ行(小青竜湯)」と「マスク」の併買率が高い事が分かります。マスクの併買率は37.6%とピーク(30.3%)の1.2倍に達しています。ここから早期購入者は「予防意識が高い方」ではないか、と推測されます(小青竜湯は飛散前の予防目的での服用か)。また、マスクの売上ピークは1月(次いで2月)となっています。以上の事からマスク売場での訴求は必須であると考えられます。
また、「鼻炎内服薬」は当然ピーク時購入者の併買率の方が高いですが、単品をみると早期購入者は2個パックや、子供向け商品のリフト値が高いという特徴が読み取れます。他にも「殺菌消毒関連」やマスクの単品では「子供用」は早期購入者の併買率が高い事が読み取れます。
以上をまとめると早期購入者は、2個パックが高いことから「症状がより重く早くから準備する方」、もう1つは「子供の鼻炎対策を行っている方」と推測する事が出来ます。薬を服用出来ない子供への予防対策の1つとして花粉防御剤の利用をお勧めすることが考えられます(例:受験対策と絡めての展開・訴求)。
このように季節品の購入タイミングによって購入者も異なるため、その時期に買いに来るお客様の悩みやニーズを理解し、それを踏まえた情報提供・販促活動を行うことが大切です。
次に、トライアル・リピート分析の更なる活用法として、発注・在庫調整への活用についてご説明します。
図3は、前々回に取り上げた総合感冒薬のトライアル・リピート分析で、これにメーカー様・卸様と小売様の動きを重ね合わせています。
大まかな流れとして
・トライアルの立ち上がりのタイミングに合わせ
在庫の確保を行う(メーカー様・卸様)
全店で確実に展開をする(小売様)
・トライアルのピーク(1回目)に合わせて
売上状況を確認し、売上本番にむけての在庫確保(メーカー様・卸様)
機会ロスを抑える為の在庫状況の確認(小売様)
・売上のピークに合わせて(今後トライアルが減り、リピートが逆転する)
売場変更・在庫調整提案(メーカー様・卸様)
発注調整(小売様)
・ピーク後のタイミングで
売り切り提案(メーカー様・卸様)
返品抑制の為、売場変更・売り切り(小売様)
が考えられます。トライアル・リピートが大きく動くタイミングを踏まえて、在庫調整や売場変更等を行う時期を調整し、製配販で最適な売場・在庫の実現を目指すことが可能であると考えられます。
以上、季節商材(シーズン品)の分析視点について3回にわたって述べてきましたが、最後にもう1点お伝えしたいのは「裏シーズンのチャレンジ」です。
もともと冬~春先にかけて需要が高いマスクですが、インフルエンザや花粉の対処・予防だけではなく、近年では夏場のマスクの買上率が大きく伸びています(通年化)。夏場にマスクを買う理由としては、「夏風邪対策・予防」「女性のすっぴん隠し」「エアコンによる乾燥対策(就寝時の喉の保護)」などが挙げられます。メインシーズンでは女性30-40代が中心支持年代層でありますが、夏場になると女性20-30代が中心に支持年代層となり、若年層を中心にニーズの高まりを確認出来ます。
また、夏に売れている単品を調べると、濡れマスク(就寝用)や、通気性の高い商品などが挙げられます。メインシーズンと異なり大々的に売場を確保する事は難しいですが、裏シーズンに購入する顧客像・理由を把握する事で、ピンポイントでの取り組み提案(関連の高い売場でのクロス展開等)が可能であると思われます。このようにメインシーズン以外での購入者プロファイリング(買い方、アイテムの特長、性年代、併買)を行うことで、新たな需要を掘り起こす可能性も大いにあると考えられます。例えば、制汗剤を冬に買う方はどういう方で、どんなニーズをお持ちなのか? 購入者を特定して調査を行うことで、これまでにない生活提案につなげたり、新しい切り口の商品が開発できるかもしれません。
次回コラムは、併買リフト値について取り上げたいと思います。