コラム

IDPOSデータ活用入門第25回

コラム

「併買分析を用いた顧客のプロファイリング①」

 併買分析についてはこれまでのコラムで何度かスポット的に取り上げてきましたが、今回からその定義、活用法、留意点を整理してお話します。併買とは、あるものを買っている方は他に何を買っているのか?を意味しており、IDPOSデータを用いて「カテゴリー」「サブカテゴリー」「ブランド」「アイテム」の購入者はどんな方か?をプロファイリングする際に最もよく利用される分析メニューです。
 併買には「同時購買」と「期間併買」の2種類があります。同時購買は同じレシート(バスケット)内で他に何を買ったか、を示すものです。例えば、スーパーマーケットで旬の「白菜」を使ったメニュー提案(例:白菜と豚バラ肉の鍋)をした際にメニューを構成するアイテムを「白菜」と一緒に購入頂いた方はどの位いるのか?を分析するのが同時購買です。同じバスケットに入っているべき(入っていて欲しい)組合せを検証したり、意外な組み合わせを発見するのに使います。
 また前回取り上げた、季節商材の分析でシーズン中の購入頻度が2回以下のカテゴリー(例:鼻炎内服薬)については、まさにその購入のタイミングで花粉対策に必要な品(アレルギー目薬、点鼻薬、マスク、花粉侵入防止剤、保湿ティッシュ等)を買い忘れの無い様に提案したいので、同時購買を分析します。但し、同時購買は同じバスケット内の組合せですから買上点数が低い業態では余り有益ではありません。1つの目安として1回の買上点数が5点未満の場合は要注意です。
 これに対し期間併買は1回の買い物(バスケット)ではなく、そのお客様の一定期間の買い物を分析対象にします。一般的には1~3ヶ月の全買い物を対象にして、購入者はどのような悩みやニーズ、志向を持った方なのかを明らかにしていきます。例えば、同じお客様が9月に敏感肌用のスキンケア化粧品、10月に炊事用手袋、11月に医薬品のハンドクリームを買っていれば、お肌が弱く悩みが深い方ではないかと考えられます。こうした方に日常的に必要なカテゴリーから、肌に優しい低刺激の生理用品(コットンタイプ)や無添加自然派の洗剤をご紹介し、サンプルを使って頂くなどが可能になります。そもそも、Aを買う人はBをよく買う、ことをどのように評価すべきでしょうか?

 ここで図1の便秘薬カテゴリーの併買リフト値表を見て下さい。6-8月の3ヶ月間に便秘薬を購入した人は、期間中、他に何を買っているかを集計し、これを全体のお客様と比較・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・しています。例えば便秘薬を買う人は16行目の「ビタミンB2剤」を7.4%の方が購入しています。この7.4%は高いと言えるでしょうか?それとも低いでしょうか? それを判断するには全体のお客様が「ビタミンB2剤」をどの程度購入するのかと比較する必要があります。図1にありますように、全体では2.9%の方が購入しています。そこで便秘薬購入者の買上率7.4%を全体購入者の2.9%で割った数値 2.6 がリフト値(全体顧客に対する倍率)になります。つまり便秘薬購入者は一般の顧客がふつうに「ビタミンB2剤」を買う2.6倍よく、「ビタミンB2剤」を購入する、ことを意味しています。リフト値とは便秘薬を買うと「ビタミンB2剤」を買う確率が何倍高まるのか(この例では2.6倍)を示す数値なのです。
 それでは何故、便秘薬を買う(=便秘に悩んでいる)方がビタミンB2剤(肌荒れ対策用)を買っているのでしょうか? この集計では3ヶ月間の全ての買い物を対象にしていますので、
 ・便秘薬と同時に買ったもの(便秘対策として他に有効と考えられるもの) に加え
 ・便秘薬を買う前に買ったもの(=便秘になる要因に関係するもの)
 ・便秘薬を買った後で買ったもの(=便秘の結果必要になるもの)
が含まれます。そこで便秘によって腸内環境が乱れて肌荒れが起き、その対処をしようと考えてビタミンB2剤を買ったのではないかという仮説が立てられます。
 このように期間併買の場合、得られた結果を読み解くには
 ・原因に関連するもの
 ・他の対策として考えられるもの
 ・結果必要になるもの
 を整理することが必要です。そして読み取った仮説に基づいて、便秘薬売場では便秘の原因の解消と関連する不都合を解消する総合的なプロモーション売場を作り、お客様の悩み解決につなげていきます。
 図の表はリフト値の降順にソートしていますが、これを併買率の降順にソートすると全く違う表になります。併買率が高いものは多くのお客様にとって必要なもの、例えば衣料洗剤、紙類、シャンプー等が上位に並びます。便秘薬を買う人が衣料用洗剤や紙類を併買していてもそれは多くの方にとって必要なカテゴリーだからではないか?という理由と考えられます。関連の強さを知るには全体と比較したリフト値が必要になるのです。
 但し、Aを買う人はBを買う、そのリフト値が高くてもそもそもAとBの売場が近い、あるいはA、B共に支持年代に明確な特徴がある場合は当たり前とも考えられます。併買率とリフト値の関係、読み込みの留意点は次回以降でまとめて取り上げたいと思います。