コラム
IDPOSデータ活用入門第28回
「併買分析を用いた顧客のプロファイリング④」
前回は、「うがい薬カテゴリー」の併買データを読み込むまでのプロセスを説明しました。併買リフト値の集計結果を図1(前回の再掲)のように整理して、ここから購入者像の読み込みを行います。慣れるまでは同じ「ニーズ」「悩み」「セグメント」を示唆するカテゴリーを同じ色のマーカーで着色し、それを並べて考えます。図1から読み取れる要素として以下の5つが挙げられます。
① 風邪をひいた、或いはのどが痛い
・のどの痛み対策(喉スプレー、のど飴)
・風邪薬、鎮咳去痰剤、葛根湯、熱冷却、体温計などが多数ランクイン
② 風邪・インフルエンザの予防をしたい
・マスク
・手指の消毒(手ピカジェル)、空間除菌(クレベリン)
③ うがいと同じタイミングで使用するもの
・ハンドソープ (併買率17.9%と高い)
→同じタイミングで使用するものは併買を伸ばす余地は大きい
④ 口腔トラブル・口臭の悩み
・歯槽膿漏に悩んでいるもしくは、それに起因する口臭
・洗口液・口中清涼剤などの口中ケアカテゴリー →口臭対策として(口腔内の殺菌)
・口内炎に悩む方が、口腔内殺菌を目的にうがい薬を使用
⑤ 高い清潔意識を持った方(ベビー子育て層など)
本格的な風邪の流行前に風邪を引いた方や、風邪はひいていないが予防を心がけている方が、同じタイミングで使用するハンドソープなどと一緒にうがい薬を購入している様子がうかがえます。キーワードは風邪対策と予防になります。
更に④の口腔トラブルは口腔内の殺菌消毒によって口臭を防ごうと考えていると推定され、オーラル売場での気付きも有効と思われます。また⑤は子育てママを中心に高い清潔意識を持ったセグメントが示唆されており、「赤ちゃんとの初めての冬に備える」のような子育てママ向けコンテンツの一環で除菌できる商品と共にうがい薬を紹介する等ベビー売場からの情報発信も有益と思われます。今回の分析とは少し時期がずれますが、12月後半からは受験生応援エンドで子供を「菌」から守る、という提案も考えられます。
また、12月だけに絞った併買リフト値では、大掃除関連のカテゴリーが上位に登場してきます。大掃除を行った後に「埃」が気になり、うがいをする、のではと推定されます。大掃除コーナーで、「お掃除の後、埃を吸った喉をいたわりましょう」のようなPOPを用いた気付きも考えられます。
プロファイリングの最後に併買率の絶対値とリフト値の関係について以下の3つに分けて整理します。図1は併買率1%に絞り込んだ上でリフト値順にソートしていますが、
① 併買率が高く(一緒に買う人も多く)、リフト値も高い(一般に比べて倍率も高い)カテゴリー
このケースは関連が高いことを表しており、店頭では一緒に陳列して購入頂く工夫をする、またレシートクーポン等のターゲット選定にも利用できます。但しすでに顕在化している、当たり前の組み合わせの可能性も高いことに注意します。
② 併買率は低いが、リフト値が高いカテゴリー
このケースは購入者がどんな方か、その「志向」を読み込むには有効ですが、関連陳列やクーポンのターゲティングに用いても大きな「売上アップ」に結び付かない可能性も考えられます。例えば図1のビタミンB2主薬製剤は併買率が1.2%、これはうがい薬購入者1,000人のうち、12人がビタミンB2主薬製剤を併買することを意味しています。ある店舗で10-11月の来店人数(ユニーク人数)を12,000人、うがい薬の買上率を2%とすると購入者は240人です。その240人の1.2%がビタミンB2主薬製剤を併買することから併買人数は3人になります。ビタミンB2売場にうがい薬をクロス陳列してもすぐに大きな売上アップ効果が見込めそうにないことがお分かりいただけるかと思います。ただ、口内炎治療の目的でビタミンB2売場を訪れたお客様に、「口内炎は繰り返しやすく、年に3回なる方も。口腔内を清潔に保つためにうがい薬を使ってうがいの習慣をつけましょう。」のような情報発信を行えば、どうでしょうか?そういえば最近、何度も口内炎になる、と感じている方はうがい薬を買ってみようと思われるかもしれません。リフト値が高いのに併買率が低いカテゴリーはまだ顕在化していないニーズを示唆しており、クロス展開する理由(自分ゴト化)を明記することが重要です。自分ゴトという意味で特定年代やセグメント(子育てママ、無添加自然派、新商品好き等)では併買率が高い場合は特に有効です。
③ 併買率は高いが、リフト値が低いカテゴリー
このケースは単に売り場が近い、あるいは年代つながりが考えられます。単品ごとに見ていくと特に併買率が高いのは日替わり特売品同士の組合せということもあります。併買率が高いことから、その売り場に行っていることは確かですので気付きを与える誘導POPにより購入に至る可能性があります。
以上、4回に渡って併買分析を用いたプロファイリングについて説明してきました。次回は少し視点を変えて、19年10月の増税の分析を取り上げます。