コラム
IDPOSデータ活用入門第31回
「優良顧客の特性①」
今回から顧客ランクで上位にいる優良顧客の特性について取り上げます。前回はお客様をその購入額(絶対値)でランク分けしましたが、今回はデシル分析という手法でお客様をランク分けした考察を行います。なお、デシル分析とはお客様を購入額の高い順に並べて10等分し、各グループの購買動向を調査する手法です。最上位10%をデシル1、最下位の10%をデシル10と呼びます。
図1はデシル別の購買状況です。デシル1の年間購入額はおよそ22万円弱、デシル2で9万6千円弱、デシル3で5万9千円弱であり、デシル3までの上位30%で金額構成比8割弱を占めています。来店頻度はデシル1が73.5回で月に6回程度の来店となっており、上位3デシルまでの平均で47.9回とほぼ週1回の来店となっています。
次に、デシル別性年代別人数構成比を確認します。デシル1はドラッグストアの中心来店客層である女性40代及び50代が高いことが分ります。年々、人数構成比が増加している男性客ですが、現状ではデシルが下位になるほど構成比が高まる傾向があります。男性客は一般的に目的来店性が高く、買い物時間も短い傾向にありますので(ゆっくり店内を回遊することは少ない)、目的となる売場が探し易いこと、また必要となる関連品を買い忘れなく買って頂くための気付きのある売場作りを心がけ、購入額を上げていくことが課題になります。
図2はデシル別分類別の金額構成比です。ここから読み取れる事は、デシルが上位になるほど食品の構成比が高くなるという点があります。デシル1の食品構成比は45.9%を占め、下位デシルより10%以上構成比が高くなっています。上位デシルになるほど来店頻度が高く、その分ついで買いも起こりやすい為、食品カテゴリーの構成比が高いと推測されます。
前回コラムでも述べたように、デシルランク(顧客ランク)と相関が高い因子は購入頻度です。購入頻度を上げるには、来店目的を増やす事、即ちわが店で買って頂くカテゴリーの幅を広げることが重要です。デシル4(準優良顧客)を基準にすると、デシル1は2.5倍のカテゴリー数を購入しています。ここでのカテゴリー数はJICFS品名の数を意味しています。
デシルが上位になるほど食品の構成比が高いので、食品の買い回りが多いと考えられますが、食品以外の購入カテゴリーを比較してもデシル1はデシル4の2.3倍のカテゴリー数を購入しています(同様にデシル2は1.7倍、デシル3は1.3倍)。このように食品に留まらず上位デシルは様々なカテゴリーを買い回っています。では、デシル上位の方はどのようなカテゴリーをよく買っているのでしょうか。医薬品・化粧品・日用雑貨・食品毎に分けてデシル別JICFS品名別の金額順位を示したのが図3です。
上位デシルで順位が高いカテゴリーは、ミニドリンク剤、ビタミン含有保健薬、関節痛用薬などです。継続的に使用して効果が出るカテゴリーが上位にランクインしています。一方、下位デシルで順位が上がるのは、解熱鎮痛剤、止瀉薬、乗物酔い薬、かゆみ・虫刺され薬など比較的緊急性の高い対処薬になります。また、一般検査薬のように関与度が低い店で買いたい(購入しているのを知り合い等に見られたくない)と想定されるカテゴリーは下位デシルでランクインしています。
緊急対処的なお薬、例えば、止瀉薬を買いに来た方にはお腹の調子を整える商品(整腸剤・オリゴ糖・ヨーグルトなど)を提案したり、かゆみ・虫刺され薬を買いに来た方には虫よけ剤や子供向けの虫よけリングなど、予防的な商品を提案して、一時的な購入に終わらせない工夫が考えられます。継続して効果が出る、また対象を広げる商品をお勧めすることで来店目的を増やしランクアップにつなげられる、と考えられます。
同様に化粧品カテゴリーでは、美容液・乳液のように高単価の商品や化粧下地・ヘアトリートメントのように美容意識の高い方が購入するカテゴリーが上位にランクしています。また、パックなど日常ケアにプラスオンされるカテゴリーも出現します。必須の美類に加えて日々のケアにプラスすることで、より美しく求める肌になるための商品提案も優良顧客化には必要です。制汗剤・UVケア・ハンドクリーム・リップクリームのようなシーズン品は下位デシルで順位が上がりますが、これは急に必要になり、普段買い物するお店でないところで購入しているのではないか、と推定されます。
日用雑貨カテゴリーでは、上位3デシルの1位に衣料用合成洗剤がランクしています。また柔軟剤も上位デシルほど順位が高いです。他に、ベビーオムツや大人用オムツは上位デシルの順位が高く、ベビーや介護など特定セグメントが繰り返し購入するカテゴリーをしっかりと囲い込むことでロイヤル化につながると考えられます。
食品カテゴリーでは、上位デシル程、たばこやお酒などリピート率が高いカテゴリーの順位が高くなります。たばこやお酒は男性の買上率も高いので、男性化粧品やオーラルケアなど男性の買上率の高いカテゴリーやお酒の割り材、また気持ちよくお酒を飲むための健康食品やドリンク剤などにも幅を広げることをお勧めしたい所です。
次回も引き続き優良顧客の特性について述べたいと思います。