コラム

IDPOSデータ活用入門第32回

コラム

「優良顧客の特性②」

 今回も引き続き、優良顧客の特性について取り上げます。
 優良顧客の大きな特性は来店頻度が非常に高い点です。来店頻度が高いと売場の変化や提案に気づき易くまた敏感であると想定されます。そのため優良顧客はシーズン品のトライアル(1回目の購入)が早いという特徴があります(逆に10月になっても熱中症提案のままの売場には魅力を感じていただけないリスクがあります)。

図1:季節品のトライアル状況

 図1は主なシーズン品(ハンドクリーム・かぜ薬・殺虫剤・制汗剤)のトライアル状況を表しています。デシル上位はシーズン立ち上がりの早いタイミングで初回購入されていることが読み取れます。逆に下位デシルはシーズンピーク~終盤の差し迫った段階でようやくトライアルのピークを迎えています。下位デシルの方はそもそも来店頻度が低いので店頭の訴求が変わったことにも気づいて頂きにくいと考えられます。そこで店外にいるお客様にデジタルツールも交えながらシーズン早期での気づきを与えていく事が必要です。
 優良顧客は、早いタイミングで買って頂いていますが、集合チラシ等で早期購入特典を提供し、必要なものを買い忘れなく購入頂くことを図りたいところです。これはシーズン品でも機能用途や剤型によって動き出すタイミングが異なるためで、最初に必要な機能用途、剤型をご案内し、次に必要になる機能用途、剤型へリレーすることで、カテゴリー購入額を更にアップしてもらうことを狙いにしています。具体的には例えば、制汗剤はスティック・ロールオンの動き出しが早く、スプレータイプ、シートと季節が進むにつれて売れる剤型が変わってきますので、スティックを買いに来られたタイミングでシートも買って頂くという剤型のリレーです。
 また、売場の鮮度を維持するうえで重要な「新商品」に関しても、デシル上位の方の貢献度が高いです。新商品は値引きせずに販売されることが多いため利益面でも重要です。例えば、2019年3月に発売された、ある高単価化粧品(売価1万円以上)は単価が高いこともあり、当然デシル上位の方が購入されていますが、発売直後(1週間)に絞ると、より上位デシルに集中して購入をされています。購入額の高い方には早めに新商品情報を提供し、発売前の予約を取るなどして、しっかりと囲い込みをする事が大切であると考えられます。
 また高単価商品に限らず日用品においても同様の傾向が見られます。2019年3月に発売された衣料用洗剤も発売2週間の上位デシルが占める割合が8割を超えるなど、優良顧客ほど早期に反応をしていました。新商品を優良顧客に訴求するためには発売のタイミングで店頭に並んでいること(新商品であることを示すPOPが付いていると気付いて頂きやすいです)、デジタルツールやチラシを用いて告知を行うことが必要です。新商品を発売から×日以内に全店で売上を上げる、といった早期立ち上げの具体的な目標を持つことも必要です。
 次に、優良顧客の2016年と2019年の購入状況を比較し、どのカテゴリーの買上率が伸びているのかを確認します。

図2:デシル上位買上率伸び率(2016年→2019年)

 図2は、上位デシルの買上率の伸びが大きい45カテゴリーを抜き出したものです。非食品カテゴリーで特に伸びているのは、空間除菌剤・ウェットティッシュ・マスクなどの「除菌・抗菌カテゴリー」で、近年の清潔志向の高まりを反映していると考えられます。とはいえ、優良顧客においてもマスクの買上率は44.6%と半分にも満たない状況で(空間除菌剤は10%以下に留まる)、まだ伸ばす余地は大きいと考えられます。他に、高齢化に伴う市場拡大を受け軽失禁用品・大人用オムツが伸びています。また、近年ドラッグストアにおいてはペット(特に猫フード・猫おやつ)の強化が進んでいる事もあり、伸長しています。食品カテゴリーでは、ドラッグストアでの親和性が高い健康志向食品(ビネガードリンク・トマトジュース・豆乳などの飲料、鯖缶・無塩ナッツ類など)が伸びています。他に働く女性が増え、簡便時短ニーズの高まりを受けて市場拡大している冷凍食品カテゴリーも伸びています。更にエナジードリンク、タピオカミルクティなどの流行品も伸びている事から、市場トレンドを意識した商品構成・売場/販促展開も重要と考えられます。
 最後に、優良顧客への留意点について述べたいと思います。優良顧客の方は高頻度にお店に来店される為、小売様の様々な販促策を知り尽くしています(いつが特売日、化粧品ポイント5倍デーか、など)。また、自分がその価値をよく知っているコモディティ品に関しては底値(内的参照価格)を知っており、××はいくら以下になったら買うというスイッチを持っています。そのため、自店でも競合店でもよく特売にかかる売れ筋商品では売り負けない事も大切です。ただし、商品そのものを知らない、または自分にとっての価値をよく理解していない場合に競合店よりも価格を下げても購入につながりません。商品の良さを知ってもらうこと、特にこだわりの理由を生活者(セグメント)にとっての価値に置き換え、価値を伝達する必要があります(県内の★★と共同開発、有機自然などのこだわり、時短簡便などの価値を生活者のニーズや悩みと結びつける)。
 また、狭小商圏化が進み、優良顧客の商圏が狭まっています。特に年代が上がるほど(シニアになるほど)商圏は狭くなることから、足元商圏で購入されるカテゴリー・商品を把握する事が、優良顧客の維持向上に欠かせないと考えられます。
 以上、優良顧客の特性について述べてきました。次回は優良顧客からランクダウンした場合の対応について取り上げます。