コラム

IDPOSデータ活用入門第35回

コラム

「流入流出分析②」

 前回に続き、流入流出分析について取り上げます。まず、図1をご覧下さい。

 一番上の表は前回説明したシートに指定13ブランドの継続率と離反率の列を付け加えたものです。19年1-3月に2番(大ブランドA・防臭タイプ)を購入した方のうち63.7%は4-6月にここで取り上げている13ブランドのいずれかを購入しています。逆数が離反率ですので36.3%、即ち約1/3は4-6月にこの13ブランドを一度も購入していないことになります。前回コラムで流出分析の期間設定が大切とお話ししましたが、継続率が4割を下回る場合は再購入するための期間が不足している、と考えられますので、集計期間を長くすることを考えます(但し長くし過ぎても意味がありません)。
 この指定13ブランドで売上の90%をカバーしていますので、指定13ブランド継続率は「カテゴリー継続率」と言い換えることもできます。19年のカテゴリー継続率を比較すると、2番(大ブランドA・防臭タイプ)は全体の11位で決して高くありません。小売業としてはカテゴリー継続率が高い(=自店にまた買いに来てくれる)ブランドが好ましいため、注意が必要です。
 さて、19年の2番ブランドの移行先で最も高いのは8番(大ブランドC・防臭タイプ)で9.7%、続いて6番(大ブランドD・基本タイプ)が7.1%でした。これが高いか低いかを判断するために18年の数値と比較することにします。それが2段目の表です。これを見ると、8番は18年のこの期間には販売がなかった、新商品であることが分かります。また、4番(同じ大ブランドC・防臭タイプ)は19年に大きく自ブランド継続率を落とし、8番に移行していることから、8番は4番の後継ブランドであることも分かります。よって8番への移行は18年との比較ではなく19年の他のブランドとの比較で行うべきと考えられます。上段の表で8番を縦でみると8番への移行率が高いのは6番→3番→2番となり、2番からの移行率は比較的高いと考えられます。また前回も触れましたように、8番ブランドの自ブランド継続率は56.1%と非常に高いため8番に移行してしまうと8番で定着する=2番からの流出が起きることになります。
 3段目の表は19年、18年の差分ですので、2番ブランドからの移行率が上がっているのは1番、6番の順です。19年1-3月に購入者数の多いブランド順にソートしていますので、1番は最も購入者の多い人気ブランドです。その1番への移行が増えたのは非常に気になる点です。
 そして最大の懸案は19年の自ブランド継続が18年に比べて-1.4%と減少していることです。カテゴリー継続は+0.8%とアップしていますので、その分も考慮すると自ブランドの競争力は2%以上落ちていると考えられます。更に同じ大ブランドAである10番(大ブランドA・香り)への移行率も-1.4%と大きくダウンしており、大ブランドAから他ブランドへの移行が進んでいることが分かります。メーカーとして対応を考えるべき状況と言えるでしょう。
 このように流出分析は競合ブランドが大型の新商品を出した際などに、自ブランドから流出したかどうかを見極めるときに用いられます。今戦っている相手はどのブランドかという視点です。そして必要に応じて流出したのはどの層か(性年代、および量層)を掘り下げていきます。量層は使用状況から、HML(Heavy、Middle、Light)等に分ける考え方です。自ブランドが得意としてきた女性40-50代ファミリー層でH層(年間6回以上購入)が流出しているのか、男性L層(年間2回以下)が流出しているのか、によって打つべき対策が変わってくるからです。
 続いて流入分析を説明します。流入分析は後期間に購入した方は、前期間には何を買っていたか、を示す分析です。流出が前期間→後期間 で集計するのと期間設定が逆になります。
 データの読み方は次回説明するとして、流入分析はどのような場合に使うのかをお話しします。流入分析は自社で新ブランドを上市したり、主力ブランドをリニューアルした際に、新ブランド(やリニューアル品を)購入した方は、以前はどのブランドを買っていたのか、流入元のブランドは何か、を知るためのものです。
 そして流入分析で特に重要な概念が「カテゴリー新規」になります。これは小売業が重視する指標です。カテゴリー新規は、新ブランドを導入したことにより、過去に該当カテゴリーを買っていなかった方が、どれだけカテゴリーを新たに買うようになったのか、を示す指標です。柔軟剤のように多くの方に必要なカテゴリーの買上率を伸ばしていく際に、売れ筋ブランドを品揃えし、適切な売り方で提供することが基本になりますが、来店しながらカテゴリーを買っていない方に買って頂くための取り組みが欠かせません。それがカテゴリー新規獲得の活動になります。流入分析では、どのブランドが新規を取れるのか、即ちカテゴリー新規を獲得するためには、どのブランドを強化すべきなのか、を明らかにするのです。
 次回は流入分析のデータの読み方について取り上げます。