コラム

IDPOSデータ活用入門第36回

コラム

「流入流出分析③」

 今回は流入流出分析の「流入」分析について取り上げます。前回も書きましたように流入分析は流出分析と期間を逆にしたもので、後期間に買った方は前の期間は何を買っていたのか、どこから流入してきたのか?を明らかにする分析です。主に新商品を上市した、既存品でもコミュニケーションを変えたタイミングで流入元はどこかを確認するために行います。図1をご覧下さい。

図1:柔軟剤ブランドの流入

 事例はこれまでと同じ柔軟剤カテゴリーです。19年4-6月(後期間)に代表的な13ブランドを購入した人は、19年1-3月(前期間)にどのブランドを買っていたかを示しています。2番(大ブランドA・防臭タイプ)を4-6月に買った方の内、代表13ブランドのいずれかを1-3月に買っていた方は62.4%で、これが継続率です。その逆数である37.6%がカテゴリー新規率です。厳密にいうと、代表13ブランド以外の柔軟剤を買っていたかもしれませんが、この13ブランドで売上の90%を占めるので、カテゴリー新規率としています。
 カテゴリー新規率は、2番ブランドを買うことで、柔軟剤カテゴリーを新規に(少なくとも3ヶ月振りに)購入した率を示します。前期間を長くすると(例えば18年4月-19年3月の1年間にすると)、久し振りに買った、ではなく、新規に買ったという意味合いが強くなります。但し期間を長くし過ぎると、色々なブランドで新商品が出て、読み込みが難しくなること、また多くの方に必要なカテゴリーでは数値が平均的になってしまうことに注意が必要です。
 カテゴリー新規率をブランド間で比較すると(縦に見ると)、7番(大ブランドD・基本タイプ)の新規率が41.3%で高いことが分かります。7番は自ブランド継続率も44.6%で高いので、買って頂いた方もブランド継続され、新規を取り易いブランドと言うことができます。7番は購入者の多い1番ブランドからの流入が5%で非常に低くなっています。基本タイプで認知度もあり、売価も高くないため、新規として入り易いブランドと考えられます。カテゴリー新規率が高いブランドはカテゴリーの利用が高まるタイミングで(季節指数が高まるときに)、チラシに載せたり、店頭での露出を上げていきます。それによってカテゴリーの新規購入者を獲得するのです。この時必要以上に7番の売価を安くして訴求すると同じ大ブランドDの6番からの流入を招きかねません(流入率が7.2%で最も高い)。6番は防臭という機能を付加し、売価も7番より高いので、6番→7番のスイッチによる売上ダウンのリスクが考えられます。よって初めて使う方(久し振りに使う方)向けに、まず基本的な機能をお知らせし、使ってみようという気付きを与えることに力点を置きます。
 さて、流入流出分析の視点を整理しますと、流出分析では、自ブランドの流出先がどこか、つまり「自ブランド購入者が次に購入するブランド=今、戦っている相手は誰か」を意識すべきです。戦っている相手が分かったら、誰がなぜ自ブランドから流出してしまうのか、を掘り下げます。いつ、どの性年代(やセグメント)、更にどの量層(HML)が流出するのか、を調べます。ID-POSでは流出した方の会員IDを特定できますので、そのIDの方にアンケート調査を行い、流出した理由について回答して頂き、仮説を確認することも可能です(※1)。定量と定性調査から得られた結果に基づいて仮説を導き、流出させないためのアクションを実行していきます。
 一方、流入分析では「自ブランド購入者が前に買っていたブランド=戦うべき相手は誰か」を意識します。そして、それが小売店にとっての望ましいスイッチ(より付加価値があり、リピート率の高いブランドへの移行)であれば、協働して移行を促すためのアクションを実行していくのです。自ブランドを伸ばしたいとしても、高価格・高リピート率の他ブランドから自ブランドへの移行はランクダウンにつながり、小売業に受け入れて頂けないと考えられます。その場合、カテゴリー新規の獲得を狙うか、低粗利・低リピート率のブランドから自ブランドへの移行を提案していくべきです。
 流入流出分析の変形パターンに同期間併買があります。19年4-6月に各ブランドを買った人が同じ19年4-6月に他のどのブランドを買ったのかを示すものです。この同期間併買はブランドの移行と他の利用者や用途での併用、という2つの意味を持つので注意が必要です。例えば大人用と子供用の歯磨きを同じ期間に併買していてもそれは移行ではなく、使用者が異なる併用と考えられます。これを厳密に同時購入にしたのが同時購買です。1回の買い物で同じカテゴリーを2個以上買ったIDに絞り、その組み合わせを分析します。2個以上買う方のその組み合わせにより、バンドルする際にお客様に好まれるアイテムの組み合わせパターンを知ることができるのです。
 流出分析のバリエーションに「本体から、詰め替えへ」、「小容量から、大容量へ」、という望ましい移行が起きているのかを検証する分析があります。ここでは詳しく触れませんが、本体から詰め替えへの移行率が低く、次も本体そのものを買う方が多いケースもありました。本体を買ってもらうために低価格に設定したり、何らかのおまけを付けたりすると、詰め替えを買うよりも本体を買った方がお得、という場合に起こりがちです。本体から詰め替えに移行し、大容量で定着するというブランド育成のシナリオを長いスパンで店頭実現することが必要です。
 次回は新型コロナ対策で20年4月に何がよく買われ、何が買われなくなったかの分析をお示しします。
 
 ※1:代表的な調査手法にSOO(Segment of One & Only株式会社)のSOOリサーチがあります。https://www.segone.jp/services