コラム

IDPOSデータ活用入門第38回

コラム

「コロナ禍による化粧品購買行動の変化①」

 前回のコラムではコロナ禍でのドラッグストアにおけるお客様の購買行動の変化を取り上げました。マスクや消毒などの衛生品、また外出自粛になってからは食品も含め必需品を求めて、通常よりも来店人数が増えたドラッグストアですが、化粧品カテゴリーは低迷が続きました。外出が減り、外出する際もマスクを着けていることから、リップやチーク等の色物、またファンデーションなどのベースメイクも大きく実績を落としました。5/8付けの日経MJに花王さんの調査結果として、在宅勤務時でも75%の女性(20-50代)がメイクをしているとの記事がありましたが、勤務先と同じメイクという方は40%に留まりました。こうした実態を反映した実績になっています。
 基礎化粧品はメイクアップに比べると良かったですが、シニア層の来店が減ったため、美容液やクリームなどの単価が高い美類が落ち込み、肌診断などの接客ができないことから推奨品、重点品が厳しい状況でした。
 その後、5月14日に首都圏、近畿圏、北海道を除く全国で緊急事態宣言が解除されました。解除されたエリアの解除後10日間を解除前と比較して、化粧品購買行動にどのような変化があったのかを取り上げます。図1をご覧ください。

 解除前に比べてお店全体の売上は104.6%とアップしています。宣言が継続しているエリアは102.2%ですので、解除されたエリアの方がより伸びています。来店人数も微増し、更に買上点数がアップしたためです。次に化粧品ですが、解除後は前後比で114.7%と大幅な回復基調にあります。これは買上率アップ(106.7%)が主な要因で、化粧品売り場に人が戻ってきたことを意味しています。
 とはいえ、昨対では解除エリア91.3%、宣言継続エリアでは81.6%と、依然として厳しい状況が続いています。化粧品のカテゴリー別では、基礎化粧品、メイクアップ、ボディケア、ヘアケア、男性化粧品の全てのカテゴリーで前後比はアップしました。ただし昨対ではヘアカラーのみが微増で、他カテゴリーはダウンしています。特にボディケア化粧品は解除エリアも昨対で82.2%、宣言継続エリアは60.3%と大幅ダウンとなっています。これはシーズンの中核をなすUVケア、制汗防臭剤が不振なためです。
 5/25付けの日経MJ誌の1面記事によるとコロナ禍を受け、毎月の支出を減らすと答えたのは54%にものぼっています。当面、経済の先行きは不透明であり、化粧品の支出額を控えることも想定されます。一方、働く女性は増加傾向にあり、化粧品の需要自体は中期的には微増傾向にあることは間違いありません。そこで新型コロナ禍で出遅れたシーズン品や化粧品全般の売上をどのように取り戻していくのか、今の時代に合わせた売り方について、考えて見ます。
 コロナ禍の環境下では、当面、「Withマスク」、「Lessタッチアップ」が前提となります。特に基礎化粧品で店舗スタッフがお客様のお肌の悩みを聞きながら適切な商品をお勧めするカウンセリングを行うブランドへの影響が想定されます。既存のお客様には、直接の接触を減らし、できるだけデジタルでの接点を強化してきめ細かくフォローを行うことが大切です。前回購入日からの購入間隔を踏まえた、適切なタイミングで情報提供を行い、また給料日、年金支給日など購買意欲の上がるタイミングで美類・カテゴリー横断のお買得なセット品施策などが考えられます。新規の方には、タッチアップの少ない美類をセルフでご購入いただけるように、従来にも増して話題の新製品や使い方情報を売場で分かりやすく提示する必要があります。この時、買っていただける可能性のある方を購買履歴から特定してアプローチします。例えば美白ビタミンや美肌のドリンク剤を購入されている方で、美白化粧品を未購入の方などを探し、お勧め情報を配信します。お試ししやすい価格帯のトライアルセット、サンプルプレゼント等をご案内し、ご購入後はMA等を用いて定期的にリマインドを図ります。本体ご購入まできめ細かくフォローし続けていくことが新規獲得と定着には重要となります。
 次に図2で基礎化粧品の美類別課題と今後のポイントをご説明します。

 基礎化粧品美類の昨対での女性年代別買上率(5歳刻み)をグラフ化しています。「メイク落とし」の売上は昨対で91.6%と不調が続いています。メイク機会の減少が続いているためと推定されますが、「洗顔料」は昨対で112.3%と好調で特に若年層を中心に買上率がアップしています。洗顔を買いに来られた方にセットでメイク落としを販売する等が考えられます。一緒に買われる可能性の高いブランドの組合せに注力すべきです。
 「化粧水」の売上は昨対で97.0%と減少しています。1品単価は昨年並みですので、課題は買上率、中でも50代の買上率がダウンしています。高価格帯の買上率は堅調ですので、セルフでの購入につながる活動が必要です。人気アイテムをチラシで紹介したり、売場で目立たせるなどが考えられます。「乳液」の売上は昨対で87.9%と最もダウンしていますが、買上率と1品単価のどちらも92.4%で大きくダウンしています(どちらにも課題有)。一方、「美容液」の買上率は102.5%と伸びていますが、1品単価が89.2%と大きくダウンしています。「乳液」、「美容液」、「フェイスクリーム」はいずれもアクティブシニア層、シニア層が不振であり、推奨品(重点品)の購買層と重なることから、推奨品の継続者へのフォローを行うべきと考えられます。最後に「パック」ですが売上は昨対で105.0%と伸びており、特に若年層の買上率がアップしています。若年層に支持されている好調アイテムの更なる強化が考えられます。
 例年と異なる点として、Withマスクがあげられます。マスクをしながら梅雨、そして暑い夏を迎えるため、「常時マスク着用で肌が擦れて敏感になってしまった」、「湿度が上がりマスクで蒸れてメイクが崩れてしまう」、「ストレスで肌のタンオーバーが乱れがちになる」などのお悩みが考えられます。お客様のお悩みを解決できるスキンケア法をデジタルと売り場で積極的に提案しコロナで失った需要を取り戻していきましょう。次回はメイクアップについて取り上げます。