コラム
IDPOSデータ活用入門第40回
「ID-POSデータを活用した顧客視点での改廃①」
今回から、ID-POSデータ、特に「リピート率」を用いた商品の改廃について整理いたします。リピート率の定義や基本的な活用法については本コラムの20-21回で解説していますので、合わせて参考になさって下さい。
POSデータを用いて商品の改廃を行う場合、市場データの確認をしたのちに自店のPOSデータを用いてABC分析を行います。カテゴリー毎に売上金額の多い順に単品を並べ、構成比、累計構成比を算出、累計で70%までの売れ筋商品をAランク、70~90%までの商品をBランク、90%以下の商品をCランクとし、単品の機能用途を見ながらCランク商品、廃盤商品を中心にカットし、新商品や市場で売れていながら自店で未導入商品の導入を行うのです。これをID-POSデータで行うとどうなるか、ですが、ABCランクに分けるまでのプロセスは同じです。ここに購入人数(買上率)とリピート率の情報を追加します。図1をご覧ください。商品名はマスクしていますが、スーパーマーケットにおける、2ヶ月間のヨーグルトカテゴリーのデータになります。
期間中、全店で1個でも売上のあった単品は302アイテムありますが、売上の70%(Aランク)は52個、約17%のアイテムで作られていることが分かります。注目頂きたいのはリピート率順位です。最も売上が高い商品のリピート率順位は36位で比較的高いですが、売上8位の商品のリピート率順位は130位で決して高くありません。売価は手ごろであり、容量が多いからリピートしないという訳ではないようです。もう少し掘り下げる必要がありますが、特売時は購入されますが、定番売価の時には購入されない、商品はこうした傾向を示すことが多いです。
Aランクの中でリピート率順位が1桁なのは3アイテムしかなく、残り7アイテムはBCランクの商品であることが分かります。実際、リピート率上位3アイテムはいずれもCランクで、1位の商品のリピート率は80%でした。もしこの商品をCランク、売上不振とみて一方的にカットしてしまうと、その商品を繰り返し購入していたお客様はどうお感じになるでしょうか?いつも買っていた商品がなくなってしまうことで来店目的の1つが失われ、店離れにつながりかねません。このようにABC分析にリピート率を組み合わせることで顧客視点での改廃が可能になるのです。
ID-POSによるABC分析での着眼点は他にもあり、前述したものを含め以下の5つが代表的な考え方です。
(1)Aランク商品でリピート率が高いのに、全店で売上のない商品を発見し全店で品揃えする
(2)Aランク下位、Bランク上位でリピート率が高い商品に着目し、自店独自の売れ筋に育成する
(3)Cランクでリピート率が高い商品を一方的にカットしない(前述)
(4)Cランクでリピート率が低い商品をカット候補とする(実際にカットするかどうかは機能用途の確認をした上で決定する)
昨今では、店舗オペレーション効率化の面からも総アイテム数を絞り、売れ筋商品に十分なスペースを確保し、また催事やテーマに基づくプロモーションのスペースを広く取る傾向にあります。そのため、
(5)Aランク下位、Bランクの中でリピート率が低く、代替可能な商品があるものはカット候補とする
ことも行われます。
まずは(1)ですが、Aランク商品でリピート率が高い(上位20%)のに、全店で導入されていない商品を探します。例えば図1の14位、15位の商品がこれに当たります。いずれも売価が高く、売り場スペースを取るケース販売の商品です。場所を取るため、比較的小型の店では品揃えしていないのではないか、という仮説が考えられます。しかし、ヨーグルトは健康志向で伸びているカテゴリーであり、健康効果を得るためには毎日続けて喫食することが大切です。スペースの都合で2アイテムとも導入できない場合は、よりリピート率の高い14位のアイテムは全店で導入したいところです。
続いて(2)ですが、わが店独自の売れ筋商品を育成することが目的です。一般的に売上上位の品は買上率も高く、お客様は特売売価も含め、その商品を良く知っています。競合店の売価が自店を下回ればそちらで買われてしまう可能性もあるのです。そこで、Aランク上位ではなく、Aランクでも下位、或いはBランク上位にありながら、リピート率が高く、固定客がついている商品のトライアル(初回購入)を獲得して育成しようという考え方です。リピート率が高いのにAランク下位以下に留まっているのは、定番売場で目立たずひっそりと売られて(置かれて)いるためと考えられます。こうした商品のトライアルを取るには例えば、
・商品の特徴からくる、お勧め理由、使用価値をPOPにして目立たせる
・限定のお試し価格を設定する、もしくはボーナスポイントを設定する
・ものによっては試食試飲を行う
・プロモーションスペースでの展開、多箇所展開、誘導POPで気付きを与える
等の施策を行います。元々リピート率が高いので、一度味わって頂くと買い続けて頂ける可能性が高いのです。本筋とはずれますが、マス広告を打たず、特売にもなりにくい、しかしリピート率が高い商品の購入のきっかけを作る手法としてボーナスポイントはとても有効です。
次回は(3)(4)(5)について解説し、7/1にスタートした、プラスチック製レジ袋の有料化についてその動向をお伝えします。