コラム

IDPOSデータ活用入門第41回

コラム

「ID-POSデータを活用した顧客視点での改廃②」

 前回は、ID-POSデータの重要な指標である「リピート率」を用いて商品の改廃をする5つの視点についてお話しました。今回は残る(3)以降の視点を解説します。
 (3)は前回も少し記述致しましたが、リピート率が上位なのにCランクにいるのは買上率がとても低いためと考えられます。これを一気にAランクまで育成するのは道のりが遠いので、(2)のアプローチをとるよりは、リピートして下さっているお客様は誰かを確認します。優良顧客の場合は該当商品の代わりにお勧めする商品をご案内することで、「急にいつも買っていたものが無くなった」という不満をなくし、店離れを防止します。これはお店判断でのカットの際にもまた、メーカー理由での商品廃盤の際にも行うことができます。お客様にアプローチする手段が限られていた時代はこうした活動は難しかったのですが、自社アプリ等を用いたデジタルアプローチで容易にできるようになりました。続いて、
 (4) Cランクでリピート率が低い商品をカット候補とする(実際にカットするかどうかは機能用途の確認をした上で決定する)
 (5)Aランク下位、Bランクの中でリピート率が低く、代替可能な商品があるものはカット候補とする
  を合わせて説明します。毎年多くの新商品が上市されていますが、魅力的な新商品の導入を決めた場合、しっかりとスペースを取り目立たせて、お客様に気づきを与え、早く我が店で購入頂くことが大切です。ここでは触れませんが、新商品は最初に買った店でリピートする・・・・・・・・・・・・・・・・・・ことがこれまでの経験で分かっています。よってマス広告が入る新商品は早めに展開し、気付いて頂くだけのスペースを確保します。そのためにはカテゴリーの売場を広げるか、スペースが同一なら、今後伸びが見込めない商品をカットして新商品や売れ筋のスペース拡大を行うことになります。
 まず(4)にあるようにCランク商品の中でリピート率が低い商品を機能用途の視点で見たうえでカットするのですが、Cランク商品は一般的に優位置にないことが多く、またスペース配分が少ないため、5アイテムカットしても優位置にない5フェース分しか空かないことが考えられます。そのため、(5)にある、Aランク下位もしくはBランクの中からカットできるものを探していきます。
 Aランク下位でリピート率が低い商品にはどのような特徴があるでしょうか?
 ・大容量品のため、消費に時間がかかり、結果として期間が短いとリピート率が低い
 ・日常品ではなく、特定の季節やタイミング(ハレの日等)で使われる
これらは一定量売れているけれど、リピート率が高くならない理由があるものです。一方、
 ・容量も他と同程度で、売価も高くないが、ある売価を下回らないと購入されないためリピート率が低い(特売時のみ、そこそこ売れる)
というアイテム群があります。Aランク上位の人気商品であれば売価で売り負けないことも大切ですがAランク下位でこの属性を持っている商品については代替性分析を行い、カットできる可能性を検証します。つまり特売時にはこの商品を買うけれど、そうでない時は同じカテゴリーの別の商品を購入している人の割合を調べます。分析の際に、留意すべきは同時に複数アイテムを購入しているのか、別のタイミングで購入しているのか、の違いです。同じカテゴリー内で同時に複数アイテム(例:アイテムⅩ、Y) を買っている場合は家族や異なる使用シーンでの併用の可能性がありますが、同じ日にX、Y同時購入はなく、前日付でアイテムX、一定期間後の後日付ではアイテムYを購入し、その後Yを再購入している場合にはXをカットしてもYで代替可能と考えられます。Yの方がXよりも売れ個数が多ければ、代替可能性の確率がより高いと考えられます。商品のカットはその商品をご愛顧頂いているお客様の店離れを招きかねないことを念頭に置き、一方的に行うのではなく、まずリピート率に注意し、代替性を確認した上で行います。
 さて最後に、7/1から始まった有料レジ袋の10日間の利用動向について簡単に説明します。図1をご覧ください。

 ドラッグストアにおいて、10日間の来店者の内、有料レジ袋を購入したのは18.5%になります。性年代別では男女とも若年層で買上率が高く、特に男性若年層では高い状況です。初日である7/1の買上率が最も高く、徐々に買上率が落ちています。マイバッグを用意する割合が増えたと推定されます。期間中2回来店されたお客様の内、2回とも有料レジ袋を購入されたのは33%で、2/3の方は2回目にはマイバッグになっています。2回とも購入したのは男性の比率が高く、男性若年層がマイバッグを持ち歩く習慣の定着にはまだ時間がかかりそうです。
 コロナ禍のさなかにプラスチック製レジ袋の有料化が行われた日本ですが、米国では逆に持ち込みのエコバッグの使用を禁止する動きが出てきたそうです。持ち込みバッグは却って不衛生という判断になりますが、こうした措置が取られた店では再び、レジ袋が無料で配布されているとのことです。購買行動は社会環境の変化の影響を受けるので、常に最新の情報を入手してこれに備える必要があることが分かります。
 次回以降は分析に基づいて実施した施策の効果検証について取り上げます。