コラム
IDPOSデータ活用入門第45回
「ID-POSデータ活用上の留意点」
今回はID-POSデータ活用上の留意点をいくつかご説明します。パネルデータを分析する際はJICFS等の共通分類を使用するケースが殆どですが、特定の小売業のデータでは、小売業独自の分類体系に沿って商品が分類されていることに注意する必要があります。カテゴリーの市場動向を踏まえて3-5年に一度、分類体系を見直す企業がある一方で、10年一日、分類体系を見直さない企業もあります。その場合、新しく生まれたサブカテゴリーを独立させずに従来カテゴリーに組み込んでしまい、生活者の変化を捉えづらい、という課題が起こります。
また、よくご質問頂くのが、ID-POSで
また、異常値と思われるデータをどのように扱うのか、についても予め基準を定める必要があります。例えば、スーパーマーケットの売上には飲食店を経営している事業者さんのデータが含まれます。毎月、お肉を数十万円以上購入頂いているお客様と一般の生活者のお肉の需要は分けて考える必要があります。月間購入額××円以上は事業者(ビジネス)ニーズとして、切り分けて考えるといった基準を設定すべきです。事業者は購入額が大きいため、事業者専用のカードを発行して支払いサイトなども含め優遇している事例もあります。
同様にドラッグストアにはソーシャル・バイヤーが存在します。中国等にいる消費者の代わりに人気のある商品、例えば、メリーズ紙おむつやアネッサ(UVケア)、健康食品等を大量に購入して転売するのです。こうしたデータを異常値として排除するには同一商品を1度に5個以上購入しているトランザクション・データや該当IDの購買履歴を取り除く、といった前処理が必要になります。
いずれの場合も、本格的な分析に着手する前に対象データの傾向を把握したうえで、上記のような異常値があれば、これを取り除きます。
続いてコロナ禍における20年8月、スーパーマーケットとドラッグストアのお盆商戦の動向を簡単にご紹介します。図1をご覧ください。
上段はスーパーマーケット約200店舗のお盆週(8/10-16)の因数分解です。会員の売上は前年同日に比べ、104.3%と好調ですが、その要因は、来店人数(ユニーク人数)が増えたこと(102.7%)と1人当たりの購入額がアップしたこと(101.6%)です。今年の夏は感染拡大の影響を受け、故郷への帰省をしない人が多いことが予想され、例年、お孫さんを連れて帰省する家族需要でにぎわう地方のスーパーマーケットでは売上が減少するのではないか?との事前観測もありました。しかし、都会から地方へ帰省しにくいのと同様に、地方でも遠距離の旅行もしづらかったこともあり、来店人数は堅調でした。ただ、図には載せていませんが首都圏のスーパーマーケットの売上昨対は107%、地方のスーパーマーケットは103.7%でしたので、帰省も長距離の旅行も控えた首都圏スーパーマーケットの方がより好調な結果でした。
次に来店人数の内、どの性年代が増えたのか?ですが、グラフにあるように男女とも若年層が増えています。その一方で女性70-80代はマイナスになっています。この傾向はコロナ禍、2月末の巣ごもりの期間から顕著になっています。新型コロナに感染すると重篤化しやすい高齢者は外出を控える傾向が続いていて、この間、生協の宅配サービスやECの高齢者の利用が増えています。スーパーマーケットでは女性70代の構成比が高いため、全体への影響は大きく、対応を検討する必要があります。
下段はドラッグストア約700店の因数分解です。会員の売上は前年同日に比べ、105.4%と好調ですが、その要因は、来店人数(ユニーク人数)が増えたこと(101.7%)と1人当たりの購入額がアップしたこと(103.7%)です。ドラッグストアでは人数の伸びを購入額の伸びが上回っています。性年代別人数では、スーパーマーケットと同様に男女とも若年層の方が伸びていますが、スーパーマーケットほどの差はありません。女性60代以上は医薬品、健康食品、高価格帯の基礎化粧品など、1人当たりの購入額が高いため、こちらも要注意です。
以上、どちらの業態もお盆週の売上は好調でしたが、シニア層の来店人数が減っていることに対し、安心してお買い物頂くための呼び戻し策を検討する必要があることが分かります。
次回は、少し趣向を変えて、ID-POSデータを用いて行うCDT、MDS分析をご紹介します。